二〇〇〇年十月にF2戦闘機が全国で初めて三沢基地第三航空団(三空団)に配備された。F1支援戦闘機の後継機として、米軍のF16戦闘機をベースに日米が共同開発した最新鋭の支援戦闘機といわれた。一機の価格は約百二十億円。
F2戦闘機の開発段階で試作機の主翼に亀裂が見つかるなど問題が発生して、開発完了が当初計画から一年以上遅れたいわくつきの戦闘機である。二〇〇四年、石破防衛庁長官は新防衛大綱でF2戦闘機の調達打ち切りを決めている。これにより当初予定141機だったF2戦闘機は、最終的に94機にまで削減されている。
防衛庁内で検討の結果①F2戦闘機は開発の遅れなどで1機当たりの価格が当初予定していた約80億円から、主力戦闘機のF15と同じ約120億円に増加した②F15戦闘機が改修で性能向上を図っているのに対し、F2戦闘機は機体が小さく性能向上の余地が少ない③F2戦闘機はミサイルなどの装備数にも限界がある・・・ことから調達打ち切りになったとされている。これにより防衛省は、米国の最新鋭ステルス機F22Aラプターの導入を検討に入った。
ニューヨークタイムズのノリミツ・大西記者は、六月の日米共同訓練「コープ・ノース・グアム」に参加した航空自衛隊のF2支援戦闘機が、空対地射爆撃訓練で500ポンド(227キロ)の大型爆弾を用いたと一面トップで報じている。
「日本は北朝鮮を爆撃する訓練をしている」「周辺国は警戒している」といった書き方。共同訓練にはF2戦闘機八機が米空軍のF16と共同で、グアム島アンダーセン空軍基地から、グアム北方240キロのファラロン・デ・メディニラ島の空対地射場に爆弾を投下している。参加したのは三沢基地第三航空団の有馬飛行群司令以下230人。
これを北朝鮮に対する爆撃訓練と断じるのは論理の飛躍がある。米朝接近に踏み切った本国政府を無視して、米空軍が挑発的な北朝鮮爆撃訓練をする筈がない。憲法上も先制攻撃を禁じられている日本が、北朝鮮の攻撃訓練をしたとなれば国会で問題になる。
北朝鮮が核を搭載したノドン・ミサイルを発射したとなれば、第二撃を阻止するためにF2戦闘機の94全機が500ポンド爆弾を抱いて、敵ミサイル基地に攻撃をかけるのは、鳩山内閣でも認めている。日米安保条約に基づいて米空軍も出撃するであろう。だが北朝鮮が破滅を招く行動にでることは考えられない。
曰くつきのF2戦闘機だが、日米共同開発に当たって日本の航空技術陣は壮大な夢をF2戦闘機に賭けている。そのひとつは炭素繊維複合材を主翼に採用する画期的な試みである。しかし強度不足から超音速で飛行すると主翼が付け根からはがれる不具合が生じて、複合材に鉄板を入れる応急措置で間に合わせている。開発費用が当初予算の1650億円から倍増の3700億円に達したため、やむを得ず夢の戦闘機開発をあきらめざるを得なかった。
この問題をクリアしたのがF22。レーダーに映りにくいステルス性や機動性に優れた最新鋭機の開発に成功している。もとはいえば、日本技術陣が目指したものという自負がある。
もうひとつは戦闘機用高出力のエンジンが日本の技術ではできなかった。米議会は軍事機密であるエンジン技術を日本に提供しないと決めている。今回のF22の海外輸出に米議会がノウという決定を下した同じことがF2戦闘機の開発でもあった。
防衛省は来年夏に予定されている次期主力戦闘機(FX)の選定対象を6機種に絞り込んでいるが、F22にこだわる理由はここにある。と同時に米議会の厚い壁は、F2当時とあまり変わらない。米側がF22の情報を開示しない場合、選定がずれ込む可能性も出てこよう。
901 F2戦闘機とF22Aラプター 古沢襄

コメント
500ポンド爆弾を抱いて、F-2が飛び立った日には、中国がスクランブルをかけてくるでしょう。
何事も容易くはないですね。
外交がしっかりしていると何とかなるもんですが・・・
同様に韓国筋ともきちんと国交を正してくれるといいのですが。