917 暴風雨の中に船出 古沢襄

早いもので八月もあと一週間ほどで終わる。来週初めの内閣改造・党役員人事を前にして嵐の前の静けさの感がある。森元首相がいう挙党体制・党内融和人事を安倍首相が選択するのか、新保守の理念を高く掲げ、小泉構造改革路線をひた走るのか、いずれにしても前途は多難といわねばならない。
六〇年安保以来、このような局面を半世紀近くみてきた。新聞は改造人事の予想をするのだが、当たり外れがある。中には新聞に名前が出ただけで、人事を変えてしまう”意地悪首相”もいた。これを「新聞辞令」という。
安倍首相には、その余裕はあるまい。自薦他薦に耳をかさずにベストの人事を模索しているに違いない。総理大臣とは孤独なものである。自分ではベストと思っても、手ぐすねひいて待ち受けるマスコミから、あら探しをされて叩かれる。
しかし大臣適齢期と言われる人たちにとって落ち着かない週末を迎える。新聞辞令に一喜一憂せねばならぬ。
当の安倍首相は外遊中なのだが、予想人事が永田町を駆けめぐっている。その中でサプライズとはいわないが、出色のものを並べてみる。その第一は”改革派知事”といわれた増田寛也前岩手県知事の総務相起用。地方活性化の象徴的な人事だが、その一方で岩手四区の小沢一郎氏に対する牽制人事だから、果たして安倍首相にその度胸があるか?
離党中の平沼赳夫氏は新保守の象徴だが、副総理入閣説や重要閣僚起用説が消えない。ただ病み上がりの身体だから疑問符がつく。復党していて健康な身体なら、安倍首相は内閣の重しとして三顧の礼を尽くして迎えたいところであろう。
小泉前首相の郵政総選挙で初当選した”小泉チルドレン”は「小泉改革を後退させると、自民党は破滅の道に向かう」と危機感がある。学校長の武部前幹事長は「参院選で惨敗しても、ぶれずに改革を貫けるか、貫くなら自民党はさらに強くなる」と牽制球を投げた。小泉路線から逸脱すれば、小泉チルドレンから安倍批判の大合唱がおこるのは避けられない。
とはいうものの自民党内には「地方重視」「歳出拡大」の声が高まっている。「一年ぐらい改革を小休止して考え直した方がいい」「相変わらず公共事業関連費の削減論が幅をきかせているが、しわ寄せは全部地方にいく。改革の言葉を聞いたら寒気がする有権者が増えている」という意見が渦巻いている。
まったく異なる党内意見の中で「どっちつかずの姿勢」「あいまい戦略」で凌げるだろうか。一方にウエートを置けば、野党のみならず与党内にも反対勢力を抱えてしまう。私は「新保守派」と「改革推進派」にウエートを置いた改造人事を安倍首相は断行するとみているが、暴風雨の中に船出することになりそうだ。

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