927 中国航空母艦隊の編成 渡部亮次郎

岡部文雄氏(元海上幕僚長・海将)は10年前に国際経済政策調査会で「うみのバイブル」第2巻(中国海軍・南シナ海・尖閣、韓国海軍・北東アジアの諸問題に関するに関する基礎的な論文)を発表し、「歴史的事実は、中国が近隣諸国との問題解決を、平和的な交渉よりも、軍事的解決に委ねていることを物語っている」と警告していた。
あれから10年、我々が油断している隙に「空母保有を目指す中国海軍が、空母艦載機を海外に発注したことが23日までに分かった」という事態に発展した。
あの時岡部文雄氏が指摘した点は次のようなことだった。
<記憶に新しい最近の事実は、南シナ海の南沙群島をめぐる紛争(88年)において、ベトナム及び、フィリッピンが領有を主張する小島を、武力を用いて支配下においたことである。
また台湾をめぐり中国が実施した軍事演習(96年)である。明らかに「李登輝の総統選出の阻止」を目的としたものであり、ひいては「台湾の独立は仮令軍事力を行使しても許さない」と言う中国の強い意志を示したものである。
今後、中国が強力な海軍力を保有した場合、「政治的な影響力の行使や紛争解決の手段に躊躇なく使用する恐れがある」ことを念頭に置いて、近隣に位置するわが国は、それを顕在化させない対策を立てる必要がある。
そのため外交努力及び軍事政策・情報の公開や軍事交流を推進し、相互の信頼を醸成することが大切であり、同時に日米安保体制の強化を図るとともに、自ら相応の海上防衛力を保有し、常に練成しておくことである。(平成9.7.31記)>
 
あれから10年が過ぎて現状はどうなり、日本人は如何に油断しているか。2007年8月24日付の産経新聞によると、「中国、空母保有へ1歩 テスト用艦載機を発注 」と題して次のように報じている。
<【北京=野口東秀】空母保有を目指す中国軍が、空母艦載機を海外に発注したことが23日までに分かった。中国軍の動向を研究する軍事筋が明らかにした。
中国による空母建造計画の全容は不明だが、保有に向けて着実に歩みを進めているものとみられ、日米の防衛関係者は中国の動向に強い関心を寄せている。
艦載機は「テスト用」で、ロシアの戦闘機スホイ27を艦載機に改良した33型機を含む27型系統。発注先はロシアかウクライナとみられ、全体で10機程度とされる。同筋は、テスト機は訓練と艦載機としての能力評価などに使うためと推測している。
また、空母艦載機の着艦時に使う制動装置なども海外から一部購入している模様だ。制動装置は、艦載機が着艦時に使う拘束ワイヤなどで、この他にも空母用とみられる各種制御装置、電子系統の研究も進めているとみられる。
関係者によると、中国の空母建造計画は、大連に係留され改修が進められている旧ソ連海軍の未完成空母「ワリヤーグ」(約5万8500トン)を「実験用」として使用するとの見方が浮上している。
2012年前後までに運用実験を終え、その経過を見たうえで、20年代までにワリヤーグと同規模の2~3隻の国産中型空母を建造、作戦運用に必要な3隻体制を目指す-との観測だ。
中国としては空母艦隊の保有により、海空戦力を劇的に向上させ、「遠洋での防衛能力向上」を狙う一方、米海軍の空母部隊の軍事的介入の時間を遅らせる「対台湾戦略」を描いているとみられる。
ただ、空母艦隊の運用には高性能レーダーなどハード面のほかに、艦隊の編成や対空・対艦などの立体的な運用技術が必要なため、米軍のような本格的な空母艦隊とは異なる限定的戦力になるとの見方は強い。>(Sankei Web 2007/08/23 23:57)

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