私は一度も思ったことは無いが、後輩の記者連中は森喜朗元首相のことを揶揄気味に「蜃気楼」という。名前を音読みすれば読めないことは無い、か。
蜃気楼とは富山湾で春に見られるのが最も有名だが、熱や冷気のために大気中で光が異常に屈折し、海上や地上に何か物があるように見える現象(新明解国語辞典 第4版)。
つまり存在しないものが在るように見える事。能力が無いのに有るように見せかける人物もこう呼ばれるようだ。
体力を買われて大学の運動選手として入学したが、半年で退部したり、総理大臣にまつり上げられたが、能力が無いとわかって退陣に追い込まれたりすれば、こう言う名前が綽名となる。
その森氏、事情通によれば、憤懣やるかたないものがあるそうだ。今度の改造人事で長老森氏の推薦は、安倍首相によって、ことごとく退けられたからである。
森氏は官房長官に町村信孝氏、総務会長には古賀誠氏らを推薦していたが、安倍総理は森氏の要望のすべてを無視した。安倍総理にしてみたら、森氏のごり押しに負けたから、参院選挙に負けたのだから当然であろう。
たとえば麻生幹事長というのは安倍内閣発足当初からの構想だったが、森氏は青木参院議員会長(当時)と2人で中川秀直氏を強引に押し込んだ。その結果、中川氏は参院選挙戦を取り仕切れず、大惨敗となった。
参院選の惨敗で森氏の無能は証明されたのに、それでも懲りずに今回また安倍首相の後見人気取りで、改造人事で横車を押そうとしたのだから、安倍首相が言うことを聞かなくなったのは、当然の成り行きだ。
流石に麻生氏の幹事長起用に今回は、異を唱えていない。しかし森氏はこの布陣は安倍内閣が早晩、行き詰まると見て、後継首相に福田康夫氏を持ってくる伏線が隠されている。
なぜなら古賀氏を総務会長に登用させようとしたことはは他派を福田支持でまとめるために必要な人事だからである。
安倍氏のあとに福田氏を据えようという構想にはメディア界のドンと呼ばれている読売新聞の渡辺恒雄氏も賛意を示しているという。
渡辺氏は学生時代からの東條首相嫌いであり、それ故に現在の靖国神社のあり方に反対という点で福田氏に理解を示して当然なのだ。
そこで森氏としては麻生後継の基盤となる町村派、古賀派を切り崩して、福田氏有利に持ち込む思惑が見え隠れする、と事情通は分析する。
これに対して安倍総理は後継者としては麻生氏を念頭に置いているから森氏推薦の人事案を呑む筈がない。今回、敢えて各派閥の領袖を取り込んだ狙いは、森氏らの動きを封じる思惑が絡んでいるのだそうだ。
麻生幹事長は珍しく戦闘的になっている。森氏や古賀氏、山崎拓氏や加藤紘一氏が政局がらみの動きをみせれば、鎮圧もいとわない姿勢でいる。
安倍新体制にとって、敵は小沢氏だけでなく、自民党内にもあるというわけだ。
一体、森氏は日本をどこに持っていこうとしているのだろうか。明らかにアメリカよりは日中友好の名の下に中国や韓国とはできるだけ波風の立たない隣国関係を目指そうとしているように見える。
しかし、田中角栄内閣による1972年の日中国交回復、福田赳夫内閣の日中平和友好条約締結以来、実際に中国が日中友好の名の下に我々に押し付けて来たものは侵略と内政干渉ばかりではないか。
尖閣列島の簒奪を企てている。靖国問題、従軍慰安婦問題、南京惨殺問題すべてに嘘をでっちあげ、自国民に悪阻の教育を施し、すべての人民に反日機運を掻きたて、これらの嘘を日本が真実として受け留めなければ日中友好の精神に反するとまで言っている。
ことの真相は政治は共産主義、経済は資本主義という明らかに矛盾した体制を維持しながら中国共産党が人民を騙し引き続き君臨して行くための欺瞞に満ちた方便を得ようとしているためだ。
従って尖閣列島、靖国、慰安婦、南京の問題をめぐって日中友好路線を執ろうとすれば、結局日本は中国の言いなりになる。属国になってしまうのだ。中国に隙だらけの福田康夫内閣はその時、全くの売国内閣となるであろう。
森氏が蜃気楼のような人事構想を構想として語る自由は認めるが、売国政権のために政治力を振り回す事だけは止めて欲しい。売国構想だけは蜃気楼であって欲しい。
無所属候補森氏を初当選させるために死力を尽くした岸信介氏の恩に報いるに仇をもってなすことにもなる。2007・08・29
938 福田政権の蜃気楼 渡部亮次郎

コメント