守屋武昌事務次官は、退官後に防衛省顧問に就任するという。防衛省の幹部によると守屋氏には個室を与えられ、毎日出勤する事実上の常勤になるという。事実上の”院政”を敷くという報道もあった。
ところが任命権者である高村正彦防衛相にとって寝耳に水の人事であった。高村氏は「守屋氏はかつて(自身の後任人事を報じた新聞の)朝刊を見てびっくりしたことがあったそうだが、わたしはきょう新聞を見てびっくりした。わたしは何も決定していない」と記者会見で不快感を隠さなかった。
シビリアン・コントロールというが、防衛省の背広組にはおかしな動きがあり過ぎる。第一線で防衛の任に当たっている制服組にとっても、”守屋天皇”に実権が集中した四年一カ月は、長過ぎるとして功罪半ばする見方があった。
実力部隊を擁して、巨額な防衛予算を持つ防衛省の事務方に大きな権限を与えてしまうのは問題がある。水が淀むからである。東京地検特捜部が内偵を始めたという観測もある。
高村氏が「ここで人心一新して、さらに国民のために防衛の仕事をきっちりやっていく体制をつくりたい」と言ったのは至極、当然のことではないか。トップの防衛相に相談することなく、防衛省顧問の人事を背広組が勝手にリークするようでは、戦前の跳ね上がった軍部の専横を思わせる。
シビリアン・コントロールも何もあったものではない。このような下克上の風潮は厳しく処断して、根を絶つことが必要でないか。
守屋氏は退任の記者会見で、日米が1996年に返還合意した沖縄県の米海兵隊普天間飛行場の移設がいまだに実現していないことについて、「10年前の県民の思いをふまえて原点に返って考えて頂く必要がある」と述べ、政府の移設案に反対している沖縄県や名護市を暗に批判している。
久間元防衛相と意見の食い違いもあったという噂もある。小池前防衛相との対立も普天間飛行場問題で、小池氏が名護市寄りになる危惧があったという。政治主導で、この問題が処理され利権がからむことになる批判は、それとして正しいのかもしれない。
それは認めるのだが、防衛相に面をおかして直接苦言を呈することであろう。防衛相を無視して人事を勝手にリークすることは許されることではない。
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