957 麻生・与謝野ラインの安倍政権 古沢襄

改造後の安倍政権は麻生・与謝野ラインによって維持される姿が見えてきた。気の早い向きは「麻生・与謝野内閣」であって安倍首相はお飾りに過ぎないと陰口を叩く。私は安倍・麻生・与謝野・二階のバランスに乗った新体制だとみている。
このバランスの一角が崩れれば安倍政権は崩壊するが、四本の矢が結束しているかぎり意外と強い構造になっている。
もう少し子細にみれば安倍政権は三つの支持組織から成立している。
一つは戦後レジームからの脱却という理想を掲げた新保守主義のグループ。安倍首相の本質でもある。拉致問題が表面化して以来、このグループが力を得ている。米国のネオコンに比する向きもあるが、ネオコンは米国流儀の民主化を世界に広げるために武力行使も厭わないとしているのに対して、新保守主義は日本の伝統と文化を再認識しようというナショナリズム的な発想が色濃い。
ネオコンが外向けの力学だとすれば、新保守主義は内向けだといえよう。かなり精神復興という色合いがあるから、靖国参拝に固執するところがある。このグループは自分たちが安倍政権のコア(核)だと自負している。
第二のグループは小泉前首相が主導した構造改革路線を推進した人たち。新保守主義の精神論とは一線を画しているが対立概念でもない。経済優先主義と言っても良いだろう。竹中平蔵氏や武部元幹事長、郵政総選挙で当選した一年生議員たちという広範な支持母体を形成している。民主党内にも、この考え方に近いグループが内在している。
そして最後のグループは小泉改革で生じた”負”の部分の修復を目指す人たち。反小泉路線ではないが、改革のスピードをスローダウンさせて、格差是正、地方重視の政策を当面の重点目標に据えている。代表的なのは与謝野官房長官や二階総務会長であろう。この現実派は、三つのグループで多数派になったとみている。
注目すべきは三つのグループが対立して存在しているのではない。むしろ補完しあっている。そして一つのグループが欠ければ、総合力が落ちるという認識でも共通している。
たとえば新保守主義のグループが突出して安倍首相に靖国参拝や集団的自衛権の行使(政府見解の変更)を迫れば、党内的には孤立する。玉砕覚悟で孤立化の道を選ぶほど単純なものではない。
小泉改革推進派も改革の負の部分の手当の必要性は分かっている。改革を放棄しないかぎり与謝野官房長官や二階総務会長に異を唱えるつもりがない。三つのグループがバランスを保ちながら政策面で前進しようとしている。戦後政治のうえで極めて特徴的な自民党の構造が生まれようとしている。
この論理からいえば、不評の安倍首相は三つのバランスのうえで欠かせない存在となっている。麻生首相にすれば自民党の支持率がうなぎ上がりにあがるという単純なものではない。逆にいえば民主党の小沢代表は、三つのバランスをどう突き崩すかが、戦略上、必要になる。

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