968 アジア系米国人のスパイ説 古沢襄

ソウルの黒田勝弘氏は、北朝鮮に逮捕された外国人スパイの日本人説に懐疑的で、アメリカ人や韓国人の可能性を予測している。ソウル滞在が長く、北朝鮮事情に詳しい黒田氏の観測なので、説得力を持ってる。
ソウルの情報関係筋によれば「対米関係が緩和・改善の方向にあることから、北朝鮮は体制引き締めのために、米国への警戒心を強調した」動きが、スパイ摘発の背景とみている。スパイが持っていた機材のには、米国製のGPS(衛星利用測位システム)チップが入っていたという。
アジア系米国人が関与していた可能性も捨てきれない。だが米朝接近が大詰めを迎え、テロ支援国家の指定解除、米朝国交正常化を視野に入れている現在、米国が意図的にスパイ工作をしたとは考えにくい。
あるとすれば北朝鮮が国内の引き締めを狙って、外国人スパイ事件をプレイアップしたように思う。単純なスパイ事件というより、政治的な思惑が隠された北朝鮮の発表だったのではないか。
<【ソウル=黒田勝弘】北朝鮮の国家安全保衛部は5日、平壌で「外国情報機関のスパイ謀略策動を粉砕」と発表したが、その背景としてソウルでは「国内秩序の乱れとそれに伴う国内情報の対外流出に対する金正日政権の危機感」(ソウルの情報関係筋)が指摘されている。
また発表は「外国」の国名は明らかにしなかったが、主に米国や中国と推定され、「とくに6カ国協議などを通じ対米関係が緩和・改善の方向にあることから、体制引き締めのため米国への警戒心を強調したもの」(同筋)とみられている。
北朝鮮で「外国スパイ摘発」を“秘密警察”である国家安全保衛部幹部が内外記者会見として発表するのはきわめて異例。北朝鮮の官営メディアはこれをテレビ中継などで内外に大々的に伝えている。
発表は「外国情報機関に吸収されたスパイと、それを操縦、指揮していた情報要員を逮捕し、スパイ技術機材も押収した」とし、外国情報機関の活動として「第3国に出入りするわが活動家のうち一部の不健全な対象者を金品、女色、脅迫、恐喝によって吸収し、彼らをスパイに転落させた」とか、「一部住民が現在、経済事情や生活上の問題のために不法越境したことを利用し、謀略をめぐらせている」と述べている。
これは最近、中朝国境経由などで北朝鮮の内部を撮影したビデオなど各種の情報が数多く外部世界に流出していることに警告を発したものだ。
また「スパイ機材」にソニー製品が含まれているとしながらも、それは「商標の盗用」で「ソニー社製作と見るにはさまざまな不足点があった」とし、その機材には「米国製のGPS(衛星利用測位システム)チップが入っていた」として“米国のスパイ活動”をにおわせている。
このほか「敵の謀略宣伝」として最近、外から送り込まれた「小型ラジオは約1万1700台」「異質の電子製品、電子媒体は約265万点」で「ばらまかれたビラは近年、1万枚以上」と述べている。
これらの多くは韓国や日本をはじめ外部の諸団体が対北人権活動の一環として送り込んだものとみられ、発表はそうした動きに対する北朝鮮当局の危機感を表したかたちになっている。
今回の発表は韓国については触れていないが、ソウルでは「近く開催される南北首脳会談などで韓国と和解ムードが出ているため、韓国との接触拡大に対する警戒の意味も当然、含まれている」(同筋)との見方もある。>

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