米国では民主党の小沢代表に対する批判が出ている。テロ特措法の延長に反対した姿勢が日米同盟に不要な損害を与えるという。主として知日派の学者たちが、この論陣を張っている。米政府内にも小沢氏に対する批判が広がっていて、東西冷戦中の米仏関係のように、日米はパートナーとしては離反していくという見方が出ている。
本来なら野党の小沢氏を説得し切れない日本政府に米国の批判がくるのだが、安倍首相が退陣表明して、入院中なので小沢氏に集中的な批判が集まったといえよう。
小沢氏の外交路線は日米、日中、日欧とも等距離を保つ自主外交といえる。小泉外交路線のような突出した日米同盟には距離を置いている。福田外交もアジア重視の姿勢をとるから米国としては気になるところであろう。
ただ福田外交はテロ特措法の延長が時間切れになって中断することになっても、新法を成立させて対外公約となったインド洋の自衛艦による給油業務を継続する方針を示している。このかぎりでは日米同盟は揺らぐことはない。
ワシントンから古森義久特派員が「小沢民主党代表の策略 日米同盟に損害」とする報告をしてきている。
<【ワシントン=古森義久】米国の大手研究機関AEI(アメリカン・エンタープライズ・インスティテュート)研究員の日本政治専門学者マイケル・オースリン氏は小沢一郎民主党代表のテロ対策特別措置法反対が日米同盟に不必要な損害を与えうる危険な策略であり、米国政府当局者たちは非公式の次元では小沢氏のこの動きを政治のもてあそびとみて激怒しているという見解を発表した。
長年、日本政治を研究し、エール大学准教授から今年夏にAEI研究員となったオースリン氏は総合雑誌の「アメリカン」9月号に寄せた「新しい日本?」と題する論文でこの小沢氏に関する見解を明らかにした。
同論文は安倍晋三首相の辞任表明を踏まえて、小沢氏がテロ特措法の延長に反対していることについて「小沢氏は日本が、国連が実施する作戦にのみ参加することに固執し、日米同盟への比重を減らそうとしているが、これは外交的にも国内選挙の観点からも危険な策略である」と述べ、その説明として「米国は同盟の誓約への姿勢を変えることはなく、日本が(小沢氏がいま主張するような)より独立的なアプローチを長期にとれば、東西冷戦中の米仏関係のように、日米はパートナーとしては離反していくだろう」と説いた。
同論文はさらに(1)もし日本国民がそのような日米離反による日本の孤立がどんなものかがわかれば、小沢氏の政策が日本にとって最重要な日米同盟に不必要な損害を与えたとして懲罰を下すだろう(2)日米同盟のそうした変質は米国のアジア全体への対処を変え、米国を中国により接近させるようになりうる-と述べた。
オースリン氏は同論文でまた「米国当局者たちは小沢氏がテロ特措法を政治のもてあそびとしているとみて、非公式な次元では激怒している」と述べ、その説明として日本の自衛隊はインド洋での給油活動をやめれば、これまで給油を受けてきたパキスタンの艦艇が撤退せざるをえなくなり、アフガニスタンでの対テロ闘争で唯一のイスラム教国であるパキスタンの脱落は他の諸国への否定的な影響が大きい、としている。
同論文は小沢氏の言動に関連して「小沢氏はかつてはより積極的な日本の外交政策主張のチャンピオンであり、経済パワーにふさわしい地球規模の役割を求めてきた。だがいまや国内政策に論議の焦点がしぼられた日本の参院選でも、小沢氏がアフガンでの対テロ闘争からの離脱を訴えることには困惑させられた」という率直な見解をも表明している。>
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