宮崎正弘氏の「ウラジオストック開発にプーチン政権が本腰」の記事を読みながら十年前にウラジオストックを訪れた日を想い出している。市内のレストランでジプシーが唄うロシア民謡に耳を傾けながら食事をした。
明日は日本に帰国する。苛酷な十日間のシベリア旅行が終えて、日本茶が飲みたい、ザルソバが食べたい、寿司のトロが食べたい・・・考えるのは食べ物のことばかりであった。
ウラジオストックは軍港として外国人が入れない防諜都市が長く続いている。行ってみると韓国資本との合弁で新しいホテルが建ち、観光都市に変わろうとしていた。通訳のロシア女性が「ウラジオは風の街。ロシアの中で一番好き」と唄うように言っていたのが印象的であった。
新潟空港から二時間、盛岡に行くより近い。ハバロフスクと時間は変わらないが、ウラジオの方が発展性があるのではないか。ハバロフクスクは”坂の街”という。
<中国主導の「東アジア共同体」、日中朝の「日本海経済圏」をつよく牽制へ
2012年、ウラジオストックでAPEC首脳会議の開催が決まっている。
正式に露西亜は39億ドルの投資を決めており、年内に13億ドルがウラジオストック開発に注がれる。
ウラジオ空港の拡充と港湾整備、つぎにアルミ精錬所プロジェクトの実現、原子炉建設、さらに備蓄基地。
おどろくのは沖合ルスキー島にリゾートを建築するという不動産プロジェクトまで含まれていることだ。
「つぎの六年間に141億ドルを経済発展貿易省が約束している」(『ユーラシア・デイリー』、9月18日付け)。
朝鮮の清津(ラジン)港開発は、北朝鮮でなく、中国が租借した上での開発を急いでいる。
これは日本が「日本海経済圏」などと囃されて、中国が露西亜国境に「経済特区」をひらき、ロシアのポシェット港へ鉄道で繋げると言っていた時代(十年ほど前まで)、清津港の開発を、まさか、中国が行うとは考えていなかった。
嘗ての「日本海経済圏」構想は、事実上振り出しに戻っていた、と考えた方がいいだろう。
ロシアの巻き返しは、プーチン政権の経済政策が、あまりにEU偏重であることへの極東からの反発と、取り残された極東シベリアに眠る資源開発に、ふたたび関心があつまってのプーチンのUターンが重なっている。
アジア太平洋の時代と騒がれて、ロシアが極東開発へおもい舵取りをしたのは、じつはプーチン政権からである。
▼ 総予算が787億ドルとなると大法螺に聞こえるが。。。
プリモール県知事のセルゲイ・ダルキンは、APECウラジオ会議の重要性を突破口に、各種大プロジェクトの誘致に成功した。
ダルキン知事は、APEC準備に58億ドルという途方もない予算を要求し、「こうしなければシベリア、極東から人口はますます減少するだろう」と警告を忘れなかった。漁場基地の拡充も、ことさらのように付け加えられた。
さらにダルキン構想では、造船所を建設し、ウラジオストック周辺を一大「経済特区」へと生まれ変わらせ、アジア太平洋時代に対応するというもの。
かれの構想に従えば、「総予算は787億ドルにも達するが、地域GDPは2020年までに現在の六倍になると見積もられる」と豪語した。(インターファックス、9月10日)。
ウラジオは、その昔「浦塩」と書いた。往時の反日分子の拠点だった。安重根は、この地に潜んで伊藤公のハルビン入りを知り、暗殺を思い立った。(宮崎正弘)>
1008 ”風の街”ウラジオストック 古沢襄

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