決着がまだ着かない。党大会は十月十五日に開幕。
江沢民院政の残滓を引きづった「上海派」の巻き返しが、強引なかたちで露呈し、次期執行部人事は胡錦濤、温家宝の意のままには動かなくなってきたと北京筋がつたえる(NYタイムズ、10月6日付け)。
党大会直前の土壇場へ来て、まだ展望が見えないのだ。政治改革を前にして、大きな、目には見えない、中国的な政治の固まりにぶつかった。
当初から政治局常務委員を現行の九名から7名に減員させ、その機会に便乗して、江沢民の息のかかった賈慶林、呉官正、李長春を政治局から追い出して、共産主義青年団人脈を抜擢する手筈だった。そのために温家宝は李克強(遼寧省党書記)を布陣させてきた。
曾慶紅は、「太子党」から人材を抜擢して、これを上海派との対立の効果的な緩衝剤としてテコにつかい、次期執行部を総主流派形式で形成させ、実は曾慶紅自身も居座る思惑で、舞台裏の暗躍をしてきた。曾は序列五位で表向き「国家副主席」だが、事実上のナンバー2.
江沢民前主席派の巻き返しは、曾慶紅の暗躍に巧妙に乗りつつ、曾人脈にありながら、上海派との距離も近い、習金平(上海市新書記)を、李克強より上のランクで政治局入りさせ、近未来の党書記、国家主席を担わせようとしている。
▼「太子党」vs「共青団」vs「上海派」の対立構造の流動化は「台湾」問題で
共産党幹部の息子らが権力の周辺で権益をむしり取る構造はつづいている。太子党の膨大な利権を、かれらは共産主義青年団などという党テクノクラートなんぞには渡せるものか、という心づもりなのだ。
温家宝の「持ち駒」になった李克強は、せいぜいが次期首相どまりとさせ、さらに守旧派は温一族のスキャンダルを表面化させて、首相の座からひきずり降ろし、そのための口実に「経済過熱を抑制できなかった」政策の失敗を挙げる、という。
一方、この政治的デッドロックを乗り切る手だてとして、胡錦濤は台湾問題を唐突に議論のトップに据えるだろうといわれる。この情報はすでに永田町周辺にも駆けめぐっている。
台湾は従来主張してきた、「中華民国」としての国連加盟運動を取りやめ、陳水扁政権は「台湾は『台湾』としての国連加盟」という政治キャンペーンを国際的規模で開始した。
それならば、北京としては、台湾が、「独立するのなら軍事的行動を辞さない」と公言してきた人民解放軍に、胡錦濤は、老獪かつ巧妙に「公約を守れ」とばかり、強硬路線を政治的に煽って軍の支持を盤石なものとし、その上で、対台湾強硬路線を確定してゆく過程のなかで、人事戦略を意のままに仕上げようという戦術を行使するのではないか。
いずれにしても党大会の開幕まで、あと一週間。(「宮崎正弘の国際ニュース・早読み」より)
1029 上海派、強引な巻き返しへ 宮崎正弘
宮崎正弘
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