1048 乱れ飛ぶ日本の政局不安 古沢襄

新聞、月刊誌、週刊誌が入り乱れて小沢民主党の品定めに忙しい。焦点は小沢氏と日本共産党が手を結んだという観測。これで次の総選挙で民主党は大勝し、自民党は下野すると早々と選挙予測を出したところもある。
その一方で「大英帝国衰亡史」の著者・中西輝政京大教授は「”悪魔の密約”小沢一郎と日本共産党」(WILL十一月号)と「小泉純一郎が福田を倒す日」(文藝春秋十一月号)を発表して話題を浚っている。
NHKの世論調査では福田内閣の支持率が58%の高支持率だったと発表した。すでに新聞、通信社の世論調査でも60%に近い高支持率を福田政権は得ている。自民党の支持率が回復したのに対して、民主党は支持率が低下、NHK調査では20%を切った。
小泉改革路線が否定される政治情勢が生まれれば、小泉元首相が決然として再登板するという観測が根強い。これに対抗するために小沢氏は岩手四区から東京の選挙区に移るサプライズを考えていると予測する向きもある。
しかし自民党も民主党も三百小選挙区の候補者が、まだ定まっていない。選挙準備も整っていないのに年内解散、来春解散の噂が飛びかい、幻の候補者で当落判定が先行しているのだから、気の早いことである。
海の向こうのアメリカも日本の政治情勢は大いに気にしている。反米色が強い小沢氏という評価が定着しているので、民主党が政権を握れば日米関係が劇的に悪化すると懸念を抱いている。小沢訪中説も飛びかっているので、日本の米国ばなれが現実のものになりそうである。
福田外交がアジア重視を鮮明にしているのも気になるところであろう。インド洋における自衛艦の給油業務は中断せざるを得ない情勢だから、今になってアメリカは日本の引きとめに躍起となっている。
そんなアメリカ情勢をワシントンから産経新聞の古森義久特派員が伝えてきている。
<【ワシントン=古森義久】米国の日本やアジアの研究者たちは福田康夫新首相の下でスタートした政権をどうみているのか-。福田政権が日米関係を重視してこれまで歴代の自民党政権の安保政策や対外政策の基本を続けるという展望には一致した見方があっても、対米関係にかける比重の減少や中国への傾斜の増大には程度の異なる予測が表明された。
日本の政治や日米安全保障を専門とするボストン大学のトーマス・バーガー教授は「福田氏の選出は自民党としてとにかく当面の安定を求めるという思考の結果であり、派閥ファクターの復活もその党内政治の基盤としてはやむをえないのだろう」と語り、「国内政策では種々の格差を減らすことなどを目標に選挙区奉仕の旧態アプローチが復活するだろう」と予測した。
福田政権の対外政策についてバーガー教授は「この政権は明らかに長期ではないから、従来の路線の基本が継承されるだろうが、それでも小泉政権から安倍政権へと勢いを増してきた日米同盟の強化はスローダウンすると思う。『米国にとって日本はアジアのイギリスになる』というブッシュ政権周辺の期待ははずれるだろう。具体例としては日米共同のミサイル防衛の前進などが遅くなる」という予測を明らかにした。
福田政権下で民主党の反対によってインド洋での自衛隊給油活動が停止された場合についてバーガー教授は「軍事的な意味はそれほど大きくないにしても、象徴的には日本の日米同盟からの後退として米側を激しく失望させ、長期には米国がアジアの安全保障案件で中国に接触する度合いを高めると思う」と語った。
日本の政治に詳しいワシントンの戦略国際研究センター(CSIA)のニコラス・セーチェーニ研究員は「福田政権はまず経済政策面で予算を中心に財政赤字の削減や格差問題への取り組みを最優先するだろう。外交面では少なくとも短期には歴代政権のそれと大きく異なる点はないと思う」と述べた。
同研究員は福田政権の対外政策についてさらに「福田氏は安倍氏の『美しい国』のような明確な価値観を示さないとはいえ、一般にいわれるよりずっと日米同盟を重視しており、対米関係を大切に扱うと思う」と述べ、福田氏が2001年の米中枢同時テロに際して官房長官として日米間の安保協力を円滑に推進した実績を指摘した。
ワシントンのヘリテージ財団の中国専門研究員で、日本の政治動向にも日中関係の視点から注意を向けているジョン・タシック氏は「福田政権は今後の4、5カ月を乗り切ることを使命としているため、長期の政策課題を真剣に考えてはいないと思う」と前置きしたうえで、「なおそれでも福田政権の中国への宥和(ゆうわ)や妥協が過剰になる傾向を懸念している」と述べた。
タシック氏はその懸念の理由として(1)福田氏自身が過去の日中関係や日台・中台関係でとにかく中国の主張に逆らうのを避けるという志向を再三、示してきた(2)福田氏は中国の大規模な軍拡によるアジアでの覇権追求に対し戦略的思考で対応するという気配がなく、中国の拡張は追認するようにみえる(3)新内閣の外相になった高村正彦氏が日中友好議員連盟の会長であることも象徴的には対中宥和の方向を指している-などという諸点をあげた。>

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