だが、面妖すぎないか、と全米一の投資家バフェットは全株を売却した
ヒラリー・ローダム・クリントン上院議員の『フォーリン・アフェアーズ』への寄稿論文が話題を読んでいる。「中国との関係は今世紀もっとも重要となるだろう」という基本路線で書かれたヒラリー論文には、日本に関しての記述が殆ど無い。ジャパンパッシング(日本無視)である。
国際通貨基金(IMF)の報告書『世界経済見通し』(07年10月17日)は「中国が世界経済発展の最大の推進力になりつつある」と予想した。同時に中国を含む新興市場経済(ロシア、ブラジル、印度など)の急速な発展により、米国、日本、ユーロ圏の経済低迷は効果的に緩和されたとしている。
ゼーリックが世銀総裁となって、初めてのIMF報告は、「西側先進国が信用危機に直面している間に、世界経済は中国、インド、ロシアといった新興市場の経済活動への依存度を深めた」とも指摘しており、2006年度だけでも、中国、露西亜、印度の参加国が世界経済成長に果たして貢献度は50%超だったとなんだか、これも中国を絶賛気味なのだ。
▼ そんなことより、もっと衝撃的ニュースはこれだ!
英紙『フィナンシャル・タイムズ』は中国の資源企業「ペトロチャイナ」が不抜のトップ企業「エクソン・モービル」を抜き去る可能性が高く、おそらく世界一の企業の座に着くだろう、と予測したのである。(同紙、10月19日付け)。
ちなみに、時価総額でランキングを作成すると(10月17日の世界市場のデータをもとにトムソンデータストリーム調査)、次のようになる。
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順位 企業名 時価総額(億ドル)
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1 エクソンモービル 5260億ドル
2 ペトロチャイナ 4330
3 GE 4200
4 中国移動(チャイナモービル) 3820億ドル
5 ICBC(中国工商銀行) 3380
6 ALTRIA 3310
7 マイクロソフト 2910
8 ガスプロム(ロシア) 2780
9 ロイヤルダッチシェル 2730
10 シノペック 2700
11 AT&T 2560
12 中国人寿(生命保険) 2410
13 BP(ブリティッシュ・ペトロ) 2400
14 香港上海銀行 2320
15 BHP 2240億ドル
世界のメジャーを押しのけて、ペトロチャイナが世界一企業となる日は本当にあるのか?
このランクは、あくまで時価総額を並べてのもので、株式は夢を買う側面があるから、急成長の企業の情報の透明性なぞお構いなしの欠陥もある。
それにしてもペトロチャイナの株式が急騰している背景には、第一に業績の伸びの凄まじさ、とりわけガスの商売が85%も伸びたことばかりか、第二に渤海湾の埋蔵が世界一のランクらしいという業績予測の上方修正が大きい。
エクソンの保有する石油鉱区の埋蔵は228億バーレル。ペトロチャイナは、205億ドルの埋蔵量へと急激な増加ぶり。ちなみにロイヤルダッチシェルは、113億バーレルに過ぎない。
▼ところがバフェット氏は、ペトロチャイナ全株を売却した
予測とは反対の行為に出たのがウォーレン・バフェット氏だ。氏は全米最大最強の投資集団「バークシャー・ハザウェイ」を率いる。
七月にもペトロチャイナ株式を大量に売却していたが、バフェットが保有した全株ではなかった。
議会や左翼マスコミから「スーダンのダルフールにおける虐殺と政府の武力弾圧に手を貸す中国、その当該企業の株式を保有することはスーダンの虐殺に手を貸すことである」と非難されたため?
ではなかった。
バフェットは市場を慎重に観察しながら、「値ごろ感」で、売却することにしたと淡々とフォックステレビに出演して語った(ロイター、10月18日)。
バフェットは、06年に全体の11%の株主で簿価は4億8800万ドルだった。それが33億ドルに化けていた。差益は報道されている通りであるとすれば、じつにじつに28億ドルになる!
「中国を手玉にとって荒稼ぎの天才」となったわけかも。
ともかく過去二、三年というもの全世界のマスコミを振るわせている主役は、中国! 中国! 中国である。(「宮崎正弘の国際ニュース・早読み」より)
1085 ペトロチャイナの躍進、躍進、また躍進 宮崎正弘

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