1094 太子党(Prince)の未来 渡部亮次郎

2007年10月22日の中国共産党第17期中央委員会第1回総会(1中総会)で発足した政治局で共産主義青年団と上海閥と拮抗して進出する結果となったものに「太子党=たいしとう)がある。
太子党とは中国共産党の高級幹部の子弟等で特権的地位にいる者たちのこと。太子は英語のPrinceの意味。
党組織だけでなく、コネを生かして企業経営等に関わる場合がある。なお大抵は親の方が地位・知名度共に上だが、曽慶紅のように子の方が出世した例もある。
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』が挙げる代表例として以下の人物がいる。頭に出てくるのが親。
劉少奇―劉源(子:軍事科学院政治委員、中将)
林彪―林立果(子:元空軍作戦部副部長)
鄧小平―鄧樸方(子:中国障害者協進会主席)・鄧榕(子:中露友好協会会長)・鄧楠(子:中国科学技術協会党書記)
葉剣英―葉選平(子:政治協商会議副主席)
李先念―劉亜洲(娘婿:空軍副政治委員、中将)
陳雲―陳元(子:中国国家開発銀行頭取)
江沢民―江沢慧(妹:中国林業科学院院長)・江綿恆(子:中国科学院副院長)・江綿康(子:人民解放軍総政治部組織部部長,少将)
李鵬―李小鵬(子:中国華能集団公司会長)・李小琳(子:中国電力投資集団公司副会長兼中電国際社長)
朱鎔基―朱雲来(子:中国中金公司CEO)
胡錦濤―胡海清(子:新浪CEO夫人)
温家宝―温雲松(子:北京Unihub公司総裁)
薄一波―薄煕来(子:商務部長-政治局員)
習仲勲―習近平(子:浙江省党委書記→上海党書紀―政治局常務委員)
最後に出てきた習近平は父親の仲勲は元副首相だったが、思惑通りに進めば胡錦濤の後を襲って総書記になる。妻は著名な歌手、彭麗媛だ(産経新聞23日付)。
常務委員ではない政治局員の太子党は16人中5人いる。前からいた兪正声に加えて新人4人。李源潮、瀏延東、王岐山、薄煕来である。
李源潮(56)は江蘇省党委書記、瀏延東(61)は党中央統一戦線工作部長、王岐山(59)は北京市長、薄煕来(58)は商務相。前からいる兪正声(62)湖北省党委書記を含めると政治局全体での勢力は4分の1程度となる。
太子党は現役を引退した長老たちと深いつながりを持ち、経済界とのパイプも太く、影響力が強い。中国筋は1中総会の結果、長老勢力が一定の発言力を有する、と指摘している。
ところで、住友商事総合研究所 中国専任シニアアナリスト北村豊(きたむら ゆたか)氏の世界鑑測(観測にあらず)北村豊の「中国・キタムタリポート」(2006年11月17日 金曜日)によると、彼らの獲得するご利益(ごりやく)にはものすごいものがある。
<上海市党委員会書記の陳良宇が更迭される直前の2006年9月20日。香港誌「動向」の記者である羅冰が、上海市官界の腐敗について書いた文章に、「上海市の高級幹部230名余の子女は、その95%が金融、不動産、建設請負等の分野で要職にあり、97%が欧米風の庭付き高級住宅に住んでいる」という記述がある。
進学、就職、昇進高級幹部の子女が特権を享受
高級幹部の子女がその特権を享受していることは、決して上海市に限ったものではなく、程度の差はあれ、共産党中央・中央政府をはじめとして、中国全土の省・自治区・直轄市に及んでいる。
ある人物が、実力、目端、上司の引き、コネ、ゴマスリ、前任者の失脚などの巡り合わせによって、幸運にも高級幹部という権力の座に就いたとすれば、まず手がけるのは妻子に対する昇進、優良企業への就職要請、有名大学・高校への裏口入学、次に親族に対する昇進支援、就職斡旋、口利きによる利益誘導などの各種配慮である。
中国人は伝統的に大家族主義であり、一族の団結により外部からの干渉、侵害、侵略を防ぎ、子々孫々までの一族の繁栄を図ってきた。一族の中に優秀な人材がいれば、一族で資金を出し合って学問を身につけさせる。
この結果が吉と出て、その人物が官途に就いて出世すれば、当然の権利として一族全員でこれにぶら下がる。何の能力の無い者でも出世した人物の一族というだけで、あれよあれよという間に然るべき地位を得るから不思議だが、そんなものだと社会が納得して諦めているので、誰も文句は言わない。「泣く子と地頭には勝てない」ので、ひたすら「驕る平家」の凋落を待つことになる。
この大家族主義の伝統は、現在も脈々と続いており、中央政府の高級幹部はもとより、地方政府も高位の幹部から末端の郷・鎮・村の上級幹部までが、その権力に物を言わせて、妻子、兄弟、甥、姪といった一族を少しでも権力に近づけさせ、信頼できる自己の支持層をより厚いものとすることで保身を図っている。
高・中級公務員の収入は既に欧米先進国を上回っている
以前、国務院研究室、中央党校研究室、共産党中央宣伝部、中国社会科学院などの関係部門が共同で作成した調査報告書は、中国の高・中級公務員の収入は既に欧米の先進国の公務員や中産階級の収入を上回っていると述べている。
同報告書によれば、2006年3月末時点で、中国国内で私有財産(海外や香港・マカオにある財産を除く)が、5000万元(約7億5000万円)以上の人数は2万7310人であり、1億元(約15億円)以上の人数が3220人であるという。
驚くべきは、この1億元以上の金持ちには、何と90%以上の2932人もの高級幹部の子女が含まれていて、彼らが所有する資産の合計額は、2兆450億元(約30兆6750億円)以上であるというのである。
さらに、報告書は、中国の金融、外国貿易、国土開発、大型建設工事、証券という5大分野で要職に就いている人の80%から90%が、高級幹部の子女によって占められていると述べている。
それは何故か。言わずもがなの話だが、その理由は、高級幹部特権による子女の有名大学への裏口入学から始まって、有名企業への裏口入社、果ては本人の能力とは関係のない、その親である高級幹部への配慮という形でなされる早い昇進である。>
http://business.nikkeibp.co.jp/article/world/20061115/113768/
北村豊 1949年長野県生まれ。慶應義塾大学法学部政治学科卒業。住友商事入社後、アブダビ、ドバイ、北京、広州の駐在を経て、2004年より現職。中央大学政策文化総合研究所客員研究員。中国環境保護産業協会員、中国消防協会員。
これでも共産主義国家といえるだろうか。封建主義にこそ似ているではないか。中国が時代を遡っているのだとすると、封建主義の次に来るのは再革命が自明のこととなるが。「驕る平家」の凋落を待つものが多数になって江戸幕府はつぶれた。2007・10・23

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