今でこそ北朝鮮の工作員が日本国内で拉致など非合法活動をしていたことが糾弾されているが、三十数年前には韓国の軍事政権も日本国内で政敵の金大中(キム・デジュン)氏を拉致する事件を起こしていた。
悪名高きKCIA(韓国中央情報部)が日本の国家主権をおかして、金大中氏を宿泊していた東京のグランドパレスから拉致し、クロロホルムを嗅がして神戸港からコードネーム龍金(ヨングム)号の工作船で出国したといわれる。
アメリカの通報を受けた自衛隊はヨングム号を追跡して、照明弾を投下するなどして威嚇。拉致犯は金大中氏の殺害を断念して、釜山まで連行、解放したとされた国際的な拉致事件となった。
警視庁はホテルの現場から金東雲・駐日韓国大使館一等書記官の指紋を検出し、営利誘拐容疑で出頭を求めたが、金書記官は外交特権を盾に拒否。日本政府は金東雲に対しペルソナ・ノン・グラータを発動、間もなく特権に保護されて帰国した。(ウイキペデイア)
明らかな国家主の権侵害に当たるので、日本は韓国政府に謝罪を要求し、日本の捜査当局による調査も要求している。しかし韓国政府はKCIA職員かどうかも認めず関係者を不起訴処分とし、国家機関関与を全面否定していた。
結局は1973年の田中角栄首相と金鍾泌首相との会談で政治決着が図られ、事件の真相が闇に葬られている。
昨年七月に韓国政府は、金大中事件は朴政権下のKCIAによる組織的犯行だったとする結論を出し、国家機関が関与したことを初めて政府として認めた。KCIA職員の証言によれば、日本の暴力団に依頼して金大中氏の暗殺を検討したこともあるという。しかし別のKCIA職員はこれを否定している。
このような経過があって国家情報院の「過去事件の真相究明委員会」は24日、金大中事件はKCIAの李厚洛部長の指示で実行され、事件後には「組織的犯行を隠蔽する工作があった」ことを確認した。
さらには事件を田中角栄・金鍾泌会談で政治決着して真相究明を怠ったことは当時の両国政府に責任があるとしている。肝心の日本の国家主権に対する侵害には触れていない。
<【ソウル=久保田るり子】1973年の金大中拉致事件を再調査してきた韓国の情報機関、国家情報院(国情院)の「過去事件の真相究明委員会」は24日、事件は中央情報部(国情院の前身、KCIA)が直接主導した組織ぐるみの犯行との結論を出した。日韓間で最大の問題となってきた韓国による日本の「国家主権の侵害」を事件から34年ぶりに韓国が認めた形で、今後の韓国政府の対応が注目される。
委員会は、元KCIA要員などの証言から、事件が中央情報部の李厚洛部長の指示で実行され、事件後には「組織的犯行を隠蔽(いんぺい)する工作があった」ことを確認したとした。また、朴正煕大統領(当時)の指示の有無は確認できなかったが、暗黙の承認があったと判断できると結論付けた。また、事件後に日韓両国が政治的妥協を図り、真相究明を怠ったことは当時の両国政府に責任があるとしている。
調査委員会は、官民合同の調査機関として活動してきたため、韓国政府は報告書の内容をみて、立場を表明することになるとみられる。「公権力の介入」は国際法違反である「主権侵害」に該当する。
朴正煕政権時に起きた金大中拉致事件は、現場から在日韓国大使館の金東雲一等書記官の指紋が発見され、韓国中央情報部の関与が疑われたが、韓国側は金東雲氏の“私的な単独犯行”として処理した。金大中前大統領は「事件は殺人未遂だった」と主張、真相究明を求めていたが、金氏自身は日本の調査を事実上、拒否していた。日韓両国は事件の拡大を回避するため、韓国側の公権力介入はなかったことを大前提に2度にわたる高官協議で政治決着を行った。
盧武鉉政権は、主に朴正煕政権時代を指す「国家権力が犯した違法行為と人権侵害の真相究明」を国内政治の「過去の清算」と位置づけ、委員会を2004年11月に発足させた。今回の調査では「韓国の自作自演」説のあった大韓航空機爆破事件も対象となっていたが、北朝鮮のテロ事件だったことが結論付けられた。
金大中氏の拉致事件の再調査は、日韓関係への影響が大きいため、調査結果の公表のタイミングが検討されてきたが、政権末期に差しかかり、「盧政権の成果」として、この時期の公表になったものとみられている。(産経新聞)>
コメント