▼しかし、しかし。中国経済の大暴落は必ず起きる
第一のシナリオはクラッシュを伴うハード・ランディングである。庶民は株価暴落に不満を高じさせている。貧富の格差是正はママならず、胡錦濤の呪文である「小康社会」「和諧社会」「科学的発展観」なるスローガンは胡乱に映る。
共産党は庶民の不満を反日にぶつけ、すり抜けるという常套手段を用いるだろう。日本企業の工場焼き討ち、日本人殺傷を含む、いやな事件の勃発が予測される。義和団事件の再来は、夢想でも悪夢でもなく、現実のシナリオである。
第二のシナリオは対蹠的なソフト・ランディングだが、これはあり得ない。「科学的発展観」(胡錦濤)と党の正しい指導を主軸の「三つの代表論」(江沢民などと抽象的論理は絵に描いた餅。トウ小平の「白猫黒猫論」「先富論」は「改革開放」となって、庶民は高く評価したが、他方で農村の貧困も助長され、農民の反乱を招来させた。いつ、これが「太平天国の乱」の規模に拡大するか、だれも予測は不可能であろう。
「法治」と「民主」が撤退されない体制下では、マスコミの情報操作が有力だが、いまや中国庶民は携帯電話とインターネットという、過去の歴史になかった庶民の武器を得た。
第三は『第二の天安門事件』が起き、その反作用としての民主化というシナリオ。だが、民主化ロシアでは強権的プーチン独裁が復活し、ウクライナ、グルジア、キルギスの民主化は、形骸化しつつあり、政権の転覆を伴わない限り、つまり易生革命がない限り、中国的価値観と伝統の環境ではおこりにくいのである。
第四は、守旧派が捲土重来を帰しての権力掌握。そのために必要な措置をとる。軍を動かすのである。求心力の魔術はナショナリズムに訴えて深刻な国内の事態をかわし、国民のエネルギーを別の方向へ転ずるのだ。つまり、対外矛盾への転化。それが台湾への武力行使である。
もし、中国が軍事的行動にでると、西太平洋で米軍艦隊への封じ込め、在日米軍の抑制のために尖閣諸島から沖縄が焦臭くなるだろう。それは第三次世界大戦への火蓋を切る懼れが大きく、楽観はひとつも許されないのだ。(続く)
1103 「ポスト北京五輪」議論に欠けるもの(2) 宮崎正弘

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