1114 モルヒネの一万倍 渡部亮次郎

モルヒネの一万倍の効力、一滴で巨象を麻痺させる麻酔薬をロシア政府が合成している事が明らかになった。2007年10月24日付の産経新聞でモスクワの内藤泰朗特派員が伝えた。
実はロシア・チェチェン共和国の独立派武装勢力がモスクワの劇場を武力で占拠し、人質の観客130人が犠牲になった事件。あれから5年経った。
あの時、ロシア特殊部隊が人質救出作戦で使用し「無力化ガス」と呼ばれた秘密ガスの主成分が、欧米の専門家の調査で漸く明らかになり「カフェンタニル」と分かった。
事件発生から56時間経った2002年10月26日未明、ロシア特殊部隊が「無力化ガス」を劇場の通気孔から噴霧し、人質と武装勢力を気絶させて突入。
先立って武装勢力は10月23日、約900人の観客らを人質に劇場に立てこもり、チェチェン共和国からのロシア軍の撤退を要求。聞き入れられなければ人質もろとも劇場を爆破すると脅迫。
ロシア側はこれを拒否すると共に無力化ガスを噴霧した後の突入を決断したのだった。
しかし「救出」とは言うものの大量の中毒死者が出て「行き過ぎ」が叫ばれながらプーチン政権は同ガスの成分を未だに公表せず、使用の正当性を主張している。
ガスの死者。チェチェン人武装勢力42人、人質の約15%に当る130人。いずれも中毒死だった。うち10人は子供だった。
内藤特派員がロシアの英字日刊紙「モスクワ・タイムズ」の報道として伝えるところによれば秘密のヴェールに包まれていたガスの主成分は、ロシア保安当局が開発したもので、一滴で巨象をも麻痺させることができる。
人工的に合成された「カフェンタニル」。麻酔薬として知られるモルヒネの一万倍の効力を持ち、象など大型動物の麻酔薬に使われるという。人間への効力が予め試されていなかったとすれば、犠牲者は生贄だったのではないか。
<欧米の専門家は事件でのロシア側の作戦が「狡猾な離れ業だった」と評価し、劇場を血の海にしなかったロシア当局の判断が正しかったとの見解を示している>(内藤特派員)
ところで日本の北方領土近海で暴れまわっているのはロシア人ではなくチェチェン人たちだと聞いた事があるが、独立派武装勢力は弱体化したために、我々の関心も低くなっているが、紛争は終わっていない。
<チェチェン紛争はロシア南部チェチェン共和国の独立要求に対して独立阻止を目指すロシア軍が1994年、同共和国に侵攻して始まった。
96年に一旦休戦したが、99年に再燃。ロシア側の圧倒的な軍事攻勢で、独立派武装勢力は弱体化。だが2002年10月のモスクワ劇場占拠、モスクワの地下鉄や旅客機の爆破(04年)、北オセチア共和国の学校占拠(同)など紛争のテロ化が進む。
紛争による双方の犠牲者は推定で数万人に上ると見られている。>(10月24日産経新聞)。2007・10・26

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