1116 北アルプスの山小屋から下山(2) 古沢襄

私の話は前置きが長くなる癖がある。本題のことしの北アルプス・池の平小屋の一年の報告を菊池今朝和氏のメールをもとに綴ってみよう。山の生活の一端が伝わってくる。
下山して溜まっていたメールを拝読しますと、古澤さんのご体調思わしくないようですがいかがでしょうか。心配です。下山の報、仲間、知人に出したもの(40人ほどに)を手直しして、お届けいたします。 ほんの一報のつもりです。
秋は、モンロー会(池の平小屋支援組織)の友人が五名ほど手伝いに登ってくれ(茨城1名、東京1名、東海市2名、愛知他1名、富山1名)紅葉を見ながら賑やかでした。
終盤、仲間の亀さんと(神奈川・元日産の課長・蛍雪山岳会・s19生)、富山の山田さん(元北日本新聞記者・私の取材の協力者・s14生)が登場、小屋締めの、大工仕事では、奮闘めざましく、大助かりしました。
岩永(新日鉄・東海市・私の後輩・28歳)、吉沢さん(元新日鉄・東海市・同期s20生まれ)も棟間屋根外しで健闘。
それよりも、八千代さん(元池の平小屋のアルバイト・東京s19生)、冨岡さん(茨城・長年ボランテァ・ポストマン・54歳)、岩永さん、吉沢さん、山田さん、駄目押しは、亀谷さんと食糧のボッカが続き、喰い切れなくなり、前代未聞、肉、やまいも、オレンジなど荷下げとなる始末で、毎夜、焼肉、焼き魚となり、贅沢な日々が五日間続きました。
10月19日、小雪降るなか、熊の糞がボタボタ歓迎する(50個近くありました)「雲切新道」(今年できた新しい登山道です)を無事下山しました(ここは、登山者がいないと熊の巣ですね。地元の元警備隊や猟師かたも言っていまいた)。
当初、20日下山予定でしたが、悪天が予想されたので、1日早めて正解でした。20日は、猛吹雪、高所では30~40cm積もり、21日の朝は、真っ白でした。
宇奈月で2泊。新雪の写真を撮る為、室堂に廻り、2泊。23,24日は、芦峅というところで東映が撮影中の「剱岳・点の記」の追いかけをし(スタッフに知人が何人もいたので、便宜を図っていただき、一番前で、かぶりつけで見学、俳優の香川照之さんと昆虫談義・・・ほんとうに香川さん虫が好き・北日本新聞の24日朝刊の点の記の項の写真の真ん中下部に小さく映るているのが私です、浅野忠信さんも好青年でした。北日本新聞の10月22日付けの朝刊にも紅葉の八峰と池の平小屋名物の五右衛門風呂と抱き合わせで私の禿頭が乗っています)、24日夕方、約110日ぶりで、帰着しました。待っていたのは、畑と、庭の草取りでした。
平均睡眠4時間強、5kg痩せてしまいました。が、元気です。自信も付きました。特に、料理は好評でした。毎日6品に拘り、和食(お袋の味を思い出し)を中心に頑張りました。カレーとシチュウのコンビは2回だけ。なんとか気を吐きました。
今夏、念願のトンボの観察は、暇が出来た8月末からですが、そこそこに成果も出せましたし、来年に繋げる、基礎も見出せましたので楽しみです。
半永久式のトイレ(木造つくり、洋式1、和式1)、7月末基礎打ちからはじめ、素人だけで、なんとか、お客さん、ボランテァの応援を得て、10月15日ヤット完成しました。
今年はトイレに振り回され、営業に集中できない日が7月から8月まで続き、繁忙期の8月10日前後に使える状況になるか心配でしたが(それまでは、工事用の簡易トイレ1棟のみ)、なんとか8月10日には囲いが出来、手伝ってくださったボランテァのみなさんや(宿泊のお客さんが自発的に手伝ってくれた、1泊余分に泊り手伝った方も)、お客さんからも、夕食時にもかかわらず、万歳の声が挙がり、拍手が沸きあがった時には、感動し涙が出ました。
このトイレ、本来、私の高校の先輩の大工さん(釜石在住)が建てる事になっていたのですが、大工さんはじめ、助っ人が5名、上山し待機しているものの、あいにく、7月のヘリコプター飛来日は降雨の日が続きで音沙汰なし。そのうち助っ人も仕事の関係で下山。最後の切り札の、大工の先輩も、これ以上休めず下山のはめに。
これが、本当の間が悪い言うのでしょうか。久しぶりの快晴の中、力なく歩む、大工さん達の頭上に唸りをたて、600kgの荷を積んだヘリコプター現れたものの、私一人しかいなく、前途暗澹たる気持ちで一杯でした。が、次から次へと、宿泊者のなかから、同情者、協力者が現れたことは、この世は捨てたものではないと、いまさらながら感じ入ります。
今年のマスコミ関係は、山と渓谷社、1回(北方稜線の取材、星野哲郎カメラマン)、北日本新聞1回(秋の紅葉を訪ねて、10月22日、露天風呂が載った)、NHK(8月15日、ガイドの稲葉さん主役で、9月7日放映、剱岳、及び北方稜線がでた)、他に朝日新聞の平林さんが、プライベイトで私に会いに上山、トイレ建設を2日手伝い、坑道を見学して帰り。
さらにNHKのカメラマンが一人で訪ねてきて(テント)、坑道を見学して帰りました。来夏の池の平小屋周辺や坑道を撮影に意欲があるみたいで期待がもたれた。
圧巻は、新田次郎の小説、「剱岳・点の記」の映画化(東映)で池の平周辺で、9月26日から27日にかけロケーション。真剣味を感じたのは、木村大作監督はじめ、スタッフ(24名)、俳優の香川照之、浅野忠信の2名も寝袋を背をって、厳しく、長いコースを登ってきたことでした。監督、プロヂュサー以外は全員若手、きびきび、はつらつとした、仕事振りには、今の世の中に欠けているものを見たようなきがしました。
怒声が飛ぶ中、スタッフの目は輝き、監督の言葉、動きにすばやく反応して、作り上げてゆく、久ぶりにいいものを見た満足かを得ました(10月にもカメラ班の好青年、2名が監督の期待を背おい、真剣に、英知、技術を駆使し池の平の紅葉を撮影して帰りました)。
北アルプスで一番小さい小屋(定員30人)に、今シーズンは400人弱の登山者が泊って行きました。とにかく、4時間チョットの睡眠つづきで、体重が5kg痩せ、大変疲れました。池の平小屋の管理人は厳しいが、今期、得た結論です。でも、充足感も一杯です。

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