「団派」(共青団)の、もうひとりの出世頭で、李克強のライバルは李源潮(江蘇省書記)。政治局員に滑り込んだ。
その李源潮が、「中央組織部長」に就任した。これは胡錦濤の権力地盤強化、共青団の躍進などと分析するメディアが多い。しかし、この見方には一種の危険がともなう。
李源潮はたしかに李克強と並んで「明日の指導者」と待望された時期があり、胡の子飼いのライバル二人、次期総書記レースの主人公に擬せられた。李源潮は共青団のエリートだが、だがだが、かれは「太子党」なのだ。上海復旦大学数学科卒業とは、計算に強い(政治的打算に強い)。
李の父親は李干成。文革前の上海副市長である。したがって李源潮は共産党幹部高層に青年時代から顔を売ってきた。
李源潮が江蘇省書記時代、太湖の青藻汚染が世界に喧伝された。美しい湖、観光資源がすっかり汚染され、異臭を放ち、誰も寄りつかなくなった。しかし李源潮はこの責任をまったく追及されず、安穏に出世をはかれたのは、共産党高官に知り合いが多く、お互いにかばい合う「太子党」という側面が強いからではないのか。
他方、たしかに共青団人脈が強く、とくに李源潮は胡耀邦、胡馨立らの考え方(改革派)に近かった。
かれの「組織部長」就任は、上海派からも太子党からも、反発はなく、いわば共青団人事というより、三派連立(団派、上海派、太子党)のための妥協の産物ともいえるのではないのだろうか。
まして共産党の構造のなかでの組織部長とは、部長、省長、副部長、副省長の任命権限がなく、これらは政治局常務委員会の専管事項である。
▼公安部長には孟建柱(江西省書記)が抜擢
周永康の常務委員入りを機に各ポストの玉突きが起きている。新公安部長に江沢民派・黄菊系の孟建柱(現江西省党委員会書記)が就任する可能性が急浮上していると、筆者は『正論』12月号(11月1日発売)のなかで予想しておいたが、その通りになった。
孟建柱は江蘇省出身で60歳。91年に上海に赴任、93年副市長を経て、2001年から江西省書記についた。上海時代に薫陶をうけたのが、江沢民の子分だった黄菊(上海市長から政治局常務委員。ことし六月に死去)だった。
犯罪、とくに汚職、腐敗取締の元締めが周永康から、この孟建柱がになうことになる。
こうなると、上海派の汚職摘発とは、あれは一体なんだったのか。
かくして中国共産党新執行部が出そろったが、公安、規律、法務を「上海派」が掌握し、換言すれば、税金泥棒、腐敗の権化どもが、「裁判官」と「目明かし」も兼ねるという、この不条理。まさに歴代王朝の腐敗に酷似してきた。(「宮崎正弘の国際ニュース・早読み」より)
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