1137 政治の表と裏 古沢襄

<福田首相と民主党の小沢一郎代表の2回目の党首会談が11月2日午後3時から2時間の予定で開かれることになった。自民党と民主党の国対委員長が31日、会談し合意した。30日の1回目の会談では首相が海上自衛隊の給油活動を継続する新テロ対策特別措置法案の今国会成立への協力を要請。小沢氏は拒否し平行線に終わったが、首相が事態打開を目指して再会談を申し入れ、小沢氏も了承していた。(共同)>
たて続けの党首会談である。何かあると思わない方がおかしい。だが首相も小沢氏も話は平行線とニベもない。そのくせ二人とも上機嫌。自民党の伊吹幹事長は「大連立の話も解散の話もしないで下さい」と首相に釘をさしたが、海千山千の伊吹氏のことだ。本心ではあるまい。疑心暗鬼の公明党に配慮したサービス発言と解釈しておいた方がいい。
密室会談だと周囲は騒がしくなってきた。テレビや新聞記者を入れて「ヤアーヤアー」と漫才会談をしても意味がない。党首同士が腹を割って話し合うには、余人を交えずというではないか。余人を交えず党首が会って、憶測を招くのが、案外、党首同士の狙いのような気がする。
今は携帯電話という便利なものがある。本当の話は携帯電話ですれば済む。料亭で会談するのは、目くらましのショーだと思わねばならぬ。新テロ特措法だけなら、こんな手間ひまをかけた演出はしないであろう。
福田首相も公明党の疑心暗鬼が生じることを承知で二度目の党首会談を申し入れた。小沢代表だって突っ張ってきたのに「総理が会いたいというのを断る理由がない」とすんなり受けて立った。おまけに今度も二時間もかけて、じっくり話し合うという。
興味があるのは、その後の党首討論である。ガラス張りの党首討論だから、お互いに原則論を述べあうに決まっている。その原則論の裏になにがあるのか。
その昔、自社対決の時代だったが、国会の控え室で昼寝をしていたら、そこに社会党の山本幸一国会対策委員長と自民党の久野忠治国会対策委員長が入ってきた。出るに出られず衝立の後ろで息をひそめるしかなかったが、二人の話は麻雀のことばかり。
一時間ほどして「じゃー、行くか」と山本氏が席を立った。あとを追いかけて社会党の代議士会に行ったら山本国会対策委員長は「わが党は法案に断固、反対すると申し入れてきた。徹夜国会になるが、最期まで闘おう」と檄を飛ばしている。
「嘘をつけ!」と思ったが、数日後に山本氏に「国対委員長会談の部屋で寝ていたんだ」とばらしたら、山本氏は「国対委員長会談はガス抜きなんだよ」と笑って動じない。背の高い美人秘書がクスクス笑っていた。この美人秘書は岐阜市のお寿司屋さんのところにお嫁にいった。もう古希を迎えたのではないか。
これにはおまけがついた。日韓国会だったと思うが、真っ昼間に久野氏と山本氏から、国会近くの旅館で麻雀に誘われた。二階堂進氏が筆頭副幹事長だったが「クノチュウ(久野氏)はどこにいる」と田中角栄幹事長が探し回ったという。
久野氏も人が悪い。山本氏と麻雀をしていたと角さんに謝ったついでに私の名前まで出してしまった。それまでは自民党の記者室に角さんが、ふらりと現れ、早打ち将棋のお相手をさせられたこともあるが、これ以降ジロリと睨まれて、お呼びがかからなくなった。
それはともかく、額面通りのガラス張りの話を信じなくなったのは、それからのことである。関係者は亡くなっている。だが、今も同じことが繰り返されているのではないか。あの時代が懐かしい。

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