近未来の最大のライバル宝鋼集団と業務提携を拡大
新日本製鉄は中国上海が拠点の鉄鋼企業「宝鋼集団」と提携の拡大で合意した。両社が出資して設立する合弁会社で自動車用亜鉛メッキ鋼板の生産能力を倍増させるのが主な内容だが、このほかに環境保全で最大限の協力をするという。
「宝鋼新日鉄自動車鋼板」(上海市)はすでに自動車鋼板を年に180万トン生産しているが、中国市場の自動車生産は年間600万台に迫る勢いで、新しく45万噸工場を拡大する。
問題は次の契約内容。「宝鋼が海外で株式を上場した後、株式の相互取得も検討する」。
両者の提携拡大は表向きの目的として、「収益拡大」、「生産性向上」「国際競争力強化」だが、本当の目的は世界最大の鉄鋼企業「アルセロール・ミタル」(本社ルクセンブルク)に対抗するためである。アルセロールはインド系の鉄鋼企業だが、合併、買収によりアレヨアレヨという間に世界最大となって新日鐵を脅かしている。
一方宝山製鉄とは過去三十年にわたって新日鐵が技術を教え込み、同社を中国最大の鉄鋼メーカーに育てた。
中国の商法は「右手に算盤、左手に論語」ではなく、「孫子の兵法」をもじった「孫子の商法」であり、奇襲、裏切りがもっとも得意とする特徴がある。恩を仇で返すのは、中国においては常識であり、最悪の懸念は、提携企業をある日、ごっそりと乗っ取ることにある。
プーチンのロシアが、日米が参加した国際コンソシアム「サハリン2」を、プロジェクトが完成するや、環境問題に難癖をつけて、ごっそりと乗っ取ったように。(「宮崎正弘の国際ニュース・早読み」より)
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