壮絶なパワー・ゲームが演じられている。小沢一郎氏が描いた連立方程式は、政権担当能力がないと評される”ひ弱”な民主党が、次の選挙まで政権に加わり、総選挙では自民党と雌雄を決する起死回生の奇策であった。
自民党にとっては敵兵をひそめたトロイの木馬を城内に運び込む危険をおかすことになる。それでも大連立に一歩踏み出したもは、ねじれ国会を打開する方策がないからである。雌雄を決する総選挙でも古賀選対本部長は勝利する目算があるという。
この複雑な連立方程式が民主党の役員会では理解されなかった。参院選で勝利した民意を裏切るというスジ論で小沢方程式を葬った。小沢氏は辞意を表明するしかない。辞意を表明されて小沢頼みの民主党は鴨の総立ち。一転して辞意撤回のお願いで菅代表代行、鳩山幹事長が小沢氏のところに日参している。
小沢氏の応援で当選した参院議員たちは息をひそめて混乱する民主党を見守っている。工藤参院議員(岩手地方区)は、小沢氏と行動をともにすると態度表明、東北には小沢氏を信頼する参院議員が多い。十数人が小沢氏と行動をともにするという観測も生まれている。十七参院議員が小沢氏と行動をともにすれば、政局の主導権は小沢氏が握ることになる。
これ以上のパワー・ゲームはない。小沢氏は民主党丸ごとでパワー・ゲームを演じるつもりだったろう。小沢連立方程式の理解が得られると考えていた。辞意撤回の可能性は僅かながら残っている。その前提は小沢連立方程式を民主党が呑むことである。
小沢氏は原理・原則論者だといわれてきた。しかし、小沢政策は一貫して変わっていない。その政策実現のために原理・原則を棚上げにすることも厭わない。二大政党下で不可解な連立を選択したこともあるが、小沢政策を実行する方便であった。小沢政策が連立で実現できないとなれば、迷わず連立離脱をしている。
その執念は想像を絶するものがある。その面でみれば、小沢氏の行動は政治生活において最後の賭けにでていると見るべきだろう。しかし民主党は結党以来、オープンな党内論議を経て、緩やかであっても一種の仲良しクラブ的な雰囲気を保ってきている。
小沢手法に戸惑いがあるのは、また当然といえる。政権獲得のために小沢手法の下で突き進むのか、小沢手法から脱するのか、その選択で産みの苦渋に直面しているのが、今の民主党の姿ではないか。
1159 壮絶なパワー・ゲーム 古沢襄

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