1175 混沌としてきた韓国大統領選 古沢襄

久々の黒田勝弘ソウル支局長の韓国分析である。圧倒的に優位な立場にある保守系ハンナラ党の李明博候補に対して同じ保守派の李会昌氏が出馬の意欲をみせたという。同じ保守派の分裂選挙になれば、盧武鉉大統領系の鄭東泳候補が漁夫の利を得るのではないか。
日本にいては理解し難い韓国政界の動きである。大統領選挙は12月19日に迫っている。李会昌氏は対北政策批判などで李明博候補よりさらに強い保守派の立場をとっており、ハンナラ党の大統領候補選挙で惜敗した朴槿恵女史系が李会昌氏を支持する動きもあるという。
黒田氏は「最終的に与野党どちらが勝つのか展望は難しくなってきた」と述べている。三つ巴の状態になれば、喜んでいるのは北朝鮮の金正日総書記ではないか。あるいはハンナラ党の勝利は動かないとみて、ハンナラ党内の主導権争いに移ったのかもしれない。
<【ソウル=黒田勝弘】韓国大統領選は12月19日の投票まで残り40日ほどとなったが、圧倒的優勢を続けてきた野党ハンナラ党に“分裂”の動きが表面化し、選挙情勢が複雑になっている。
波紋を起こしているのはハンナラ党で過去2回、大統領選に出馬し敗北した李(イ)会昌(フエチヤン)元総裁(72)。同党の正式候補である李(イ)明博(ミヨンバク)・前ソウル市長に対抗し、脱党による新たな出馬説が広がっている。
李会昌氏は7日、記者会見し出馬を表明するとみられているが、出馬の場合、保守票の分裂は確実で、保守系ハンナラ党への“政権交代”も危うくなりかねない。李明博氏らハンナラ党主流は説得に乗り出しているが、早くも党内部で支持者同士による物理的衝突さえ起きている。
ハンナラ党の分裂は支持率が低迷している与党陣営の革新系、大統合民主新党・鄭(チヨン)東泳(ドンヨン)候補にとっては劣勢挽回(ばんかい)のチャンスだ。
鄭候補は他の市民運動系新党・創造韓国党や旧与党の民主党、民主労働党などとの“候補一本化”による形勢逆転を狙っており、最終的に与野党どちらが勝つのか展望は難しくなってきた。
6日の韓国各紙は李会昌氏が出馬した場合の支持率調査を伝えているが、東亜日報では李明博氏42%、李会昌氏20%、鄭東泳氏15%となっている。中央日報では李明博氏39%、李会昌氏21%、鄭東氏泳12%となっている。これまで50~60%の高支持率を維持してきた李明博候補が李会昌氏にかなり食われることが予想される。
李会昌氏の突然の“出馬”は世論を驚かせ戸惑わせている。とくに支持率で終始、圧倒的にリードしている李明博候補を押し立て、念願の“政権奪還”の期待をふくらませてきた保守派にとっては“寝耳に水”の事態だ。過去2回、李会昌候補で敗れたのも背景には保守陣営の分裂があったため「またか…」と舌打ちが聞かれる。
李会昌氏は先に政界引退を公言し、今回もこれまで出馬の意図を十分、明らかにしていない。しかし政界では「李明博候補は“財産疑惑”など弱点があり“中途落馬”の可能性がある」として“代替候補”の役を考えているとか、対北政策批判などで李候補よりさらに強い保守派の立場を訴えるため、といった諸説が流れている。
ハンナラ党は正式に李明博候補を決定し、与党陣営の鄭東泳候補らに対抗してすでに実質的な選挙運動に突入しているが、党内では対立候補だった朴(パク)槿恵(クネ)系の李候補系に対する不満が依然、くすぶっている。このため、もし朴槿恵系が李会昌氏に加勢した場合、保守大分裂で情勢はまったく混沌(こんとん)とする。李会昌問題は韓国大統領選の“台風の目”になりそうだ。(産経新聞)>

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