1186 ナイ教授の新東アジア戦略思考 古沢襄

米国を代表するリベラル派の国際政治学者であるジョセフ・ナイ教授が韓国の朝鮮日報からインタビューを受けている。現在はハーバード大学特別功労教授の職にあるが、ヒラリー・クリントン大統領が誕生すれば、米国の外交・安全保障政策に大きな影響を与える人物である。
民主党のカーター政権下で国務次官補、ボブ・クリントン政権下では国防次官補、国家情報会議議長として政策決定に携わった。1995年「ナイ・イニシアティヴ」と呼ばれる「東アジア戦略報告」を作成したことでも知られる。
インタビューは韓国の保守系新聞とのものだが、韓国の外交方針について対中国、対日本、対米国と順を追って論じている。それはまた、ジョセフ・ナイ教授が中国や日本をどう見ているかを語ったものとして面白い。
(朝鮮日報)韓国は、大国である中国と日本に挟まれている。韓国は今後どのような立場を取るべきか。
(ナイ教授)どちらか一方に支配されないためには、外部の力を借りるのがとても効果的だろう。韓国が日本と反目している中国と連帯した場合には、中国が韓国を掌握することになり、反対の場合には、日本が韓国に支配的な影響力を及ぼすはずだ。
もし韓国が米国を利用して中国と日本をけん制すれば、より多く行動の自由を得られるだろう。米国に対し失望している人が多く、反米感情も高まりつつあるが、韓国が米国との同盟を維持するのが有利な理由が、まさにここにある。
(朝鮮日報)あなたは結局中国が韓国を支配することになると思うか。
(ナイ教授)中国経済がここ10年のように急速に膨張する限り、また、中国が最近のように軍事予算で二桁台で伸び続け、ソフトパワーが拡大し続ける限り、中国は現在よりもさらに影響力のある位置を占めるだろう。
したがって、韓国が中国と良い関係を持つのはとても重要だが、あまり依存し過ぎると中国の衛星国に転落する可能性もある。
(朝鮮日報)市場経済と民主主義を共有するという点で、韓国としては日本も非常に重要だ。現在、日本との関係は円満とは言えないが、どのように克服していくべきか。
(ナイ教授)歴史問題を克服するのが重要だ。過去に日本は韓国に対して大きな過ちを犯した。しかし、これを振り返って考えることは有益ではない。韓国は未来志向的に考える必要がある。
日本の小泉前首相が靖国神社を参拝したのは過去の過ちを悪化させるもので、賢明な政策ではなかった。歴史をよみがえらせただけだ。誰も靖国参拝によって得るものなどない。最上の選択は、過去ではなく未来に向かって進むことだ。
(朝鮮日報)韓国国内では「米国が日本に後押ししているから、日本の首相による靖国参拝のような事態が起きている」という見解もあるが…。
(ナイ教授)米国は明らかに日本との安保的関係を深化させようとしている。これは私が命名した“ヘッジ政策”(中国の脅威に備えて日本を育てるリスク分散政策)に基礎を置くものだ。
米国の対中政策は経済的に中国を抱え込むものだが、もし中国が日本を威嚇するほど危険になれば、ヘッジ政策のようなものが必要になる。
したがって、米国が日本との安保的関係を強化しようとしているのは事実だ。しかし、米国は決して日本の軍事的行動を刺激しようとしているのではない。米国は日本の軍国主義を望んでいない。(朝鮮日報)

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