1187 日米首脳会談は未来志向で 古沢襄

明後日、訪米の途につく福田首相は16日にブッシュ米大統領との首脳会談を行う。民主党の鳩山幹事長は「福田康夫首相は訪米を控え、何としても“土産”を持っていかなければならないという一心で(新テロ対策特別措置法案を)採決した」と当てこすったが、衆院可決が“土産”にならないことはブッシュ米大統領も福田首相も先刻承知である。
むしろ民主党はじめ野党が参院で主導権を握った日本の政治情勢がもたらす日米同盟に与える影響について率直な意見交換が行われるであろう。民主党政権ができれば日本の米国離れが生まれることを米国は深刻に懸念している。
それはこれまでの日米の軍事同盟が新しい段階を迎えたことになり、日本をアジアの英国と位置付けてきた米国の世界戦略に影響を与える。それはまた日本にしてみれば、敗戦後、六十年以上も米国に追随してきた外交路線の大きな転換になる。今すぐ民主党政権が誕生しないまでも大きな流れとして日本は独立国家の色彩を強める方向にあるのは間違いない。
米国が懸念するのは飛躍的に強化された日本の軍事力が、必ずしも米極東戦力の意のままに動く補完戦力にならないことであろう。日本国憲法があるかぎり、それはあり得ないことだったのだが、それでも日本は憲法の拡大解釈によってギリギリまで応じる努力を重ねてきた。
しかしインド洋における海上自衛隊の活動が中断され、再開の見通しも立たないことは、米国の期待と幻想に冷水を浴びせた。いつまでも「どこまでも付いていきます下駄の雪」の日本ではなくなっている。
イラク戦争への参加をあがなったフランスやドイツとまでいかなくても、日本の民意は下駄の雪とは違う選択を模索し出している。もちろん日本が独自の防衛戦略に走ることは、あり得ない。日米同盟を基軸とした集団的な安全保障政策は揺らぐ筈がない。しかし質的な転換は避けることができそうもない。
この変化を米国が認識して新しい日米関係を構築する姿勢が求められる。同時に日本も独立志向が反米ではないことを常に示す努力が欠かせない。そうでないと一時はぎくしゃくした米韓関係と同じ陥穽にはまる可能性がある。
日米首脳会談は、そういった未来志向で話し合いをして欲しい。日米蜜月の時代だった小泉政権から、独立志向の安倍政権、アジア外交重視の福田政権と日本側には少しずつ変化の兆しがある。それを米国に理解させることが肝要ではないか。

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