さんさかと書いてさざんかと読むのは中国語でいうサンサクヮの転じたもの(「広辞苑」)。四国、九州の暖地に自生、というから冬の花とはいいながら秋田で見なかったのは当然。東京・江東区の学校の生垣で11月上旬現在、満開である。
Sasanqua 古くから庭木や生け垣に利用されるツバキ科の常緑高木。日本固有種で、山口県、四国の南西部、九州北部から沖縄の西表(いりおもて)島にかけて分布する。
昭和28年のNHKラジオ歌謡に「さざん花の歌」というのがあって、初めてこの花の名を知ったが、実際に花を見たのは中年過ぎだった。
作詞:寺尾智沙(妻) 作曲:田村しげる(夫) 歌唱:鳴海日出夫
(一)
さざん花は
ひそかにも 咲いている
霜白く
庭の垣根に 降りた朝
母のおもかげ しのばせて
(二)
さざん花は
あの時も 咲いていた
幼い日
落ち葉をたいた けむにむせ
泪誘われ 泣いたとき
(三)
さざん花は
音もなく 散っている
たそがれに
落ち葉を焚けば 流れゆく
煙り哀しい 白い花
野生種は白花で一重咲きだが、古くから品種改良がおこなわれ、赤や桃色、大輪で花弁の数が多い品種などが生みだされた。江戸時代の「花壇地錦抄(かだんちきんしょう)」(1695)には50品種が、「本草花蒔絵(ほんぞうはなまきえ)」(1739)には100品種が記載されている。
また、1869年(明治2)には海外へ持ち出され、欧米やオーストラリア、ニュージーランドでも品種改良が盛んにおこなわれている。
高さ3~、葉は革質で光沢があり、長さ3~6cm、幅2~3cmの長楕円形。花は直径5~7cmで、10~12月に咲く。
同じ仲間のヤブツバキ( ツバキ)とは、枝が細く、若い枝に毛があり、花弁と雄蕊(おしべ)がバラバラに散ることで区別できる。サザンカによく似ていて12~3月に開花するカンツバキは、サザンカとヤブツバキの雑種である。
昔、山茶花究という俳優が居たが、あの方は3X3=9をもじったもので花のことではなかった。
昔、外務省で大臣秘書官をしていた時、日本商工会議所会頭の永野重雄(新日本製鉄会長)さんから大臣に招待があり、その会場に指定してきたのが「山茶花荘」だった。東京・ニューオオタニホテルの別館和室。変哲も無い和室だったが、勘定は相当なものだったようだ。
その時、日程表書き込み係りの女性職員がさりげなく「山茶花」と書き入れたので感心したことを思い出している。今から34年も前のことだ。
少年の頃は名前しか知る術も無かった山茶花。11月に入って散り始めた木もある。今の若い人たちは山茶花なんて知ろうともしないだろう。
昭和51(1976)年の山茶花の演歌は「中山大三郎作詞、猪俣公章作曲の「さざんか」。聴いた事がない。
昭和57年、突如として「さざんかの宿」が大川栄策の歌唱でミリオンセラーになった。作詞吉岡 治 作曲市川昭介。
「くもりガラスを手で拭いて あなた明日が見えますか 愛しても愛しても あぁ 他人(ひと)の妻 赤く咲いても 冬の花 咲いてさびしい さざんかの宿」
人によっては2番の歌詞が凄いという。
「ぬいた指輪の 罪のあと かんでください 思い切り 燃えたって燃えたって あぁ他人(ひと)の妻 運命(さだめ)かなしい 冬の花 明日はいらない さざんかの宿」
資料:Microsoft(R) Encarta(R) 2006. (C) 1993-2005 Microsoft Corporation. All rights reserved. 2007・11・14
1193 山茶花(さざんか) 渡部亮次郎

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