少し穿った見方をする必要がある。あるいは整理した見方といっても良い。いまは額賀財務相の疑惑に焦点が合わさっているが、これは”場外乱闘”に過ぎない。額賀氏には防衛省や防衛産業を左右する力はない。
いまの騒ぎは山田洋行と日本ミライズの骨肉の争いから始まった。一介の不動産屋に過ぎなかった山田洋行が、中堅の防衛専門商社として頭角を現したのは、防衛庁OBの宮崎元伸容疑者(元専務)の辣腕に負うところが大きかった。
しかし山田グループの不動産部門の中核である弥生不動産が抱えた113億円の不良債権処理をめぐって、山田正志オーナーは山田洋行の売却を検討し、これを知った宮崎容疑者が反発したのが、騒動の発端となっている。
このかぎりでは民間会社のお家騒動。民事裁判の世界だから東京地検特捜部が介入する余地はなかった。宮崎容疑者は日本ミライズという新会社を立ち上げ、山田洋行が持っていたエンジンメーカーのGE・アビエーション社の販売代理店契約を奪った。GE・アビエーション社はことしの七月から日本ミライズを新たな代理店として指名している。
この構図をみておく必要がある。山田洋行と日本ミライズの訴訟合戦の谷間から防衛利権をめぐる防衛省と商社の癒着が浮かんできて、東京地検が動き出したのである。山田洋行と日本ミライズの両者から相手の疑惑をリークする非難合戦が始まった。
守屋前防衛事務次官は宮崎容疑者と一体の立場にある。守屋氏は日本ミライズの次期社長にも擬せられていた。一方、久間元防衛相は山田正志オーナーとは旧知の仲である。守屋・宮崎のやり方に不快感を持った。最近、登場している社団法人「日米平和・文化交流協会」の専務理事・秋山直紀氏も久間氏の側である。
参院外交防衛委員会で証人喚問で守屋前防衛事務次官が、あえて久間元防衛相と額賀財務相の名を出したのは、この背景をみれば久間氏に狙いを定めたものと言わねばならない。無力な額賀氏はあくまでつけ足りであろう。
宮崎容疑者の守屋前防衛事務次官に対する度重なる接待ゴルフ漬けが白日の下に晒された。日本ミライズの将来は危ういと言わねばならぬ。この騒動をみてGE・アビエーション社が日本ミライズに与えた販売代理店契約を取り消している。
守屋前防衛事務次官にしてみれば、焦点が額賀財務相に集中してしまったのは計算違いであろう。民主党も福田政権を揺さぶるために額賀疑惑の追及に力を入れている。
この背景をみれば、第二幕は久間元防衛相にあることは明らかである。
ところが山田洋行時代の宮崎容疑者は、もっぱら守屋前防衛事務次官の工作に集中してきた。守屋氏さえ押さえておけば、防衛庁長官が誰になろうとも防衛省を牛耳ることができると考えたに違いない。久間氏が山田正志オーナーと昵懇な間柄なことを知っていたから、意識的に避けたのかもしれない。
これが久間追い落としを狙う側として、予期せぬネックとなったのは皮肉な結果となっている。新たな材料が出ないかぎり久間氏は安全圏にある。代わって額賀財務相が集中砲火を浴びているというのが現状であろう。
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