【ワシントン=古森義久】米国大手紙のウォールストリート・ジャーナルは16日付社説で、米国の北朝鮮の「テロ支援国家」指定解除は拉致問題解決に努める日本への平手打ちであり、日米同盟を傷つけ、やがては日本を核武装へと走らせる危険があると論じ、その解除への反対を表明した。
「ピョンヤンの死の灰」と題する同社説は「ブッシュの北朝鮮傾斜は日米同盟を損なう」という見出しで、「ブッシュ政権の北朝鮮政策転換の不運な結果の一つがいま東京で顕著となってきた」として、その転換の結果の北朝鮮の「テロ支援国家」指定解除が最近の日本への侮辱の一つであり、実施されれば「日本の顔への平手打ち」になる、と述べた。
同社説はブッシュ政権が近年、日本人拉致問題解決への進展を北朝鮮の指定解除の前提条件としてきたのに対し、今年11月には国務省のヒル次官補やケーシー副報道官が拉致問題は日朝2国間の案件であり、指定解除とは必ずしも連結していないと言明するようになった、と批判的に論評した。
同社説はさらに「拉致被害者たちの運命は日本では単なる感情的な問題ではない」として拉致解決の日本国民にとっての重要性を強調し、「この問題での米国の日本支持は安全保障上のパートナーとしての米国の信頼性の核心だ」と述べた
同社説はまた「日本国民は自国に数百基のミサイルを向ける北朝鮮の核を完全に無力化はしない合意に、米国がなぜこれほど熱心なのか、いぶかっている」として、老朽化した寧辺の核施設の「無能力化」だけで喜ぶブッシュ政権の態度を批判した。
同社説はシーファー駐日米大使がいまの米朝核合意が日米関係を傷つけると警告したことを指摘し、「その(傷ついた)兆しはもう出ている」として、福田政権がインド洋での自衛隊の給油活動継続により強い姿勢で臨まないのは、「米国と距離をおく」という内部での提案の結果だとしている。
同社説はさらにこういう思考は日本にとって将来、信頼できない米国に頼る危険よりも自国の核武装を選ぶということにつながりうる、と述べ、「ブッシュ大統領は拉致問題で(日本という)アジア最善の同盟国を放棄するというのならば、対米同盟への日本国民の信頼をぐらつかせることの結果を考慮すべきだ」と主張した。(産経新聞)
ウォールストリート・ジャーナルについて
ニューヨークで発行される国際的な影響力を持つ日刊紙。大衆紙であるUSAトゥディに発行部数第一位を譲ったが、依然として第二位を占める保守系新聞。米政界に対する影響力は衰えていない。
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