1232 突っ張り戦術には限界 古沢襄

民主党の”突っ張り戦術”はどうみても芸がない。まだ若い政党だから知恵がないのは理解できるが、徹底した抵抗戦術しか出来なかった旧社会党があえなく消滅した教訓から何ひとつ学んでいない。
そこにいくと小沢一郎氏は百戦錬磨。自民党幹事長として旧社会党を骨抜きにした練達の士である。突っ張り戦術の限界を知り尽くしているから、大連立という大技ざを利用して民主党が選挙に勝つ”先読み”をしていた。
老練な手練れの士が多い自民党は小沢手法の怖さを知っている。大連立話が壊れてほっとしているのは自民党の方であろう。
民主党が徹底した抵抗戦術に出てくれば、衆院の三分の二再議決で法案を成立させる手を使う。憲法59条に基づき法案が参院送付60日後になっても棚ざらしにされれば、参院が法案を否決したものと見なして衆院に返付し、三分の二再議決で法案を成立させることが出来る。
この手を封じるには、衆参両院協議会で与野党が法案の協議を行って、民主党の政策を与党に飲ませることである。抵抗戦術と三分の二再議決がぶつかれば、自民党を利するだけである。まさに芸のない攻め方となる。
衆院と参院では、圧倒的に衆院優位の仕組みとなっている。予算案も参院の議決がなくても自然成立するし、条約案の批准も同じである。通年国会になれば三分の二再議決が多用されることになりかねない。
三分の二再議決を封じるには、総選挙で与党の三分の二を破るしか手はないが、解散権は首相が握っている。みすみす三分の二再議決を放棄するような早期解散を福田首相がとる筈がない。不祥事が起こって福田内閣が窮地に立てば、解散よりも内閣総辞職の道を選ぶであろう。
どうみても難攻不落の自民党城を落とすには、力攻めだけでは限界がある。それこそトロイの木馬を城内に送り込んで、一挙に雌雄を決するしかない。それをしないでいれば、城を遠巻きに囲んで、衆院議員の任期満了まで待つしかなくなる。それは再来年の秋になってしまう。
やはり党首会談で小沢氏が持ち帰ったトロイの木馬方式に乗るのが、民主党にとって最善の策だった気がしてならない。
トロイの木馬
トロイア戦争において、ギリシア勢の攻撃が手詰まりになってきたとき、オデュッセウスが木馬を作って人を潜ませ、それをイリオス市内に運び込ませることを提案した。
木馬が完成すると、ネオプトレモス、メネラオス、オデュッセウス、ディオメデス、ピロクテテス、小アイアスらが乗り込み、最後にエペイオスが乗り込んで扉を閉じた。残りのギリシア勢は寝泊りしていた小屋を焼き払い、船で近くのテネドス島に移動した。
欺かれたイリオス勢は木馬を引いて市内に運び込んだ。イリオス勢はその後、市を挙げて宴会を開き、全市民が酔いどれ眠りこけた。守衛さえも手薄になっていた。
市民たちが寝静まった夜、木馬からオデュッセウスたちが出てきた。そして計画どおり松明でテネドス島のギリシア勢に合図を送り、彼らを引き入れた。酔って眠りこけていたイリオス勢は反撃することができずイリオスは滅亡した。

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