山田洋行、日本ミライズをめぐり守屋前防衛事務次官の収賄疑惑は、今週が大きなヤマ場を迎える。東京地検特捜部は週内にも守屋氏から事情聴取する方針を固めた模様だ。すでに逮捕された山田洋行の元専務・宮崎容疑者の贈賄疑惑ととも、防衛省幹部と防衛専門商社との贈収賄疑惑は大詰めを迎えることになる。
この段階で民主党の山岡国会対策委員長は額賀財務相を参院財政金融委員会に招致して、守屋氏と二人の証人喚問にこだわりをみせている。守屋氏は議院証言法により宣誓のうえで国会で証言したので、偽証罪を問われる証言をおかす筈はないという判断があるようだ。
偽証罪の事例は過去にある。構造計算書偽造事件で議院証言法、建築士法、建築基準法に違反した罪に問われていた姉歯秀次被告は、東京地裁の一審判決で懲役五年、罰金一八〇万円の実刑判決を受けた。
東京高裁は十一月七日に一審判決を支持して被告側の控訴を棄却する判決を下したが、裁判長は冒頭で議院証言法違反に言及して、姉歯被告が国会の証人喚問で最初の偽造物件名を聞かれた際に、事実と異なる「グランドステージ池上」だと証言したと指摘した。
守屋氏の証言は「宴席に額賀財務相がいたと思う」と微妙な発言をしている。このかぎりでは「額賀財務相がいた」と断定的な証言ではないので、事実と異なっても偽証罪になるか、意見が分かれるところであろう。ただ「額賀財務相が後からきて、先に帰ったと記憶している」と具体的な証言をしているので、記憶違いで逃げられるか、どうか。
いずれにしても東京地検特捜部は、守屋氏の事情聴取で収賄疑惑が固まれば、それを立件して逮捕にまで進むであろう。山田洋行の元役員室長・今治友成容疑者=有印私文書偽造・同行使容疑で逮捕=は、守屋氏に対する今年四月のゴルフ接待について、わいろ性をほのめかす供述を始めたといわれる。今治容疑者は宮崎容疑者が設立した日本ミライズに移っている。
読売新聞は次のように報じている。
<航空・防衛分野の専門商社「山田洋行」の元専務・宮崎元伸容疑者(69)から過剰な接待を受けていた守屋武昌・前防衛次官(63)について、東京地検特捜部は週内にも収賄容疑で強制捜査に乗り出す方針を固めた。
航空自衛隊の次期輸送機(CX)エンジン調達を巡り、守屋氏が今年6月、宮崎容疑者が設立した新会社との随意契約を促すような発言をしたことについて、防衛省の担当職員が圧力と感じたという趣旨の供述をしていることも判明。特捜部は、こうした供述などから強制捜査が不可欠と判断したとみられる。
防衛専門商社の不正経理事件は、元官僚トップの刑事事件に発展する見通しとなった。
これまでの調べで、守屋氏が約11年前から、宮崎容疑者から300回以上のゴルフ・飲食接待を受け、その費用は収賄罪の時効にかからない過去5年間だけで、500万円を超えることが判明。特捜部は、接待以外の現金提供の有無について宮崎容疑者らを追及する一方、同省幹部ら約40人から参考人聴取し、守屋氏による便宜供与について詰めの捜査を進めてきた。
関係者によると、問題の発言があったのは、今年6月14日、米ゼネラル・エレクトリック(GE)製のCXエンジン調達方法などを議題に同省内で開かれた会議。当時、GEの代理店は、山田洋行から宮崎容疑者が昨年9月に設立した「日本ミライズ」に移ることが内定していた。
会議で同省航空機課の職員が、一般競争入札を行って不調になった場合に随意契約にすると説明したが、守屋氏は「なぜ随意契約ではだめなんだ」「代理店は1社しかないんだから、随意契約をするのは当たり前だろう」と発言。職員は調べに、「日本ミライズに受注させろという圧力とも感じた」との趣旨の供述をしたという。特捜部は、宮崎容疑者側に有利になるよう、守屋氏が影響力を行使しようとしたことを裏付ける供述とみている。
CXエンジンを巡っては、宮崎容疑者が山田洋行在職中の2003年8月、守屋氏が議長を務めた旧防衛庁の装備審査会議でGE製の採用が決定された。また、山田洋行による装備品の代金水増し請求問題が02年に発覚した前後には、同社社員が、当時、防衛局長だった守屋氏に相談、その後、同庁が異例の処分見送りを決めている。
特捜部は、宮崎容疑者が山田洋行時代から、CXエンジンの受注などを巡り有利な取り計らいを受けることを期待して接待を繰り返し、守屋氏もそれを認識していた疑いが強いと判断。26日から捜査態勢を拡充、接待以外に現金授受がなかったかなど詰めの捜査を進めている。(読売)
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