1240 政界ルートの捜査の手が伸びるのか? 古沢襄

東京拘置所で守屋容疑者と妻幸子容疑者は、どういう思いで一夜を過ごしたであろうか。気の早い向きは、これで防衛利権をめぐる政界ルートに捜査は向かうと囃し立てる。しかし収賄罪を立件することの難しさが理解されていない。
再逮捕された宮崎容疑者と合わせて、一つひとつ取り調べを重ねることによって霧に包まれた政界ルートに迫るしかない。
政界ルートを考えるうえで重要なポイントがある。贈収賄事件で贈賄側の立件は容疑者を落とせば良い。今度の事件では宮崎容疑者に対して証拠を示して、本人が認めれば取り調べが一気に進む。宮崎容疑者が政界に贈賄工作をしていたかが一つのポイント。
そこで今、名前が出ている久間元防衛相、額賀元防衛庁長官に贈賄工作をしたかが、取り調べの焦点になる。ところが宮崎容疑者と守屋容疑者が久間元防衛相、額賀元防衛庁長官と対立関係にあったことが分かっている。
これには次のような事情がある。
事情通によると宮崎容疑者は、与野党の防衛族議員とは万遍なくつきあってきたという。
山田洋行が防衛専門商社として頭角を現したのは、山田オーナーと旧知の仲であった自民党の金丸信・自民党副総裁のところに宮崎容疑者が食い込んだからだと言われている。金丸氏が失脚した後は小沢一郎氏に近づいた。
防衛利権を引き継いだ小沢氏は、防衛庁制服組の田村秀昭元空将、永野茂門元陸将らを側近としていたから、防衛庁OBの宮崎容疑者の活躍によって山田洋行はAWACS(空中警戒管制機)、FSX(次期支援戦闘機)などのエンジン商戦で勝ってきた。野党に転落していた自民党の野中広務氏が国会でこの疑惑を追及したことがある。
このいきさつから宮崎容疑者は小沢氏と民主党に近い存在だったといえる。小沢氏から受けた恩義を忘れてはいない。とはいうものの小沢氏の野党時代が長引くと政権党に近づく必要があった。「新防衛族」といわれた自民党の久間元防衛相、額賀元防衛庁長官に接近している。宮崎容疑者も商売人だったといえる。
しかし久間元防衛相はもともと山田オーナーと近い関係にあった。山田オーナーと宮崎容疑者が抜き差しならない犬猿の仲になると、宮崎容疑者は久間元防衛相を敵と意識するようになった。
宮崎容疑者、守屋容疑者と久間元防衛相、額賀元防衛庁長官は、敵対関係になっていく。その結果、防衛庁をめぐる商戦で宮崎容疑者は、”防衛庁の天皇”といわれた実力者の守屋容疑者との密着度を深める構造が生まれている。
東京地検特捜部に宮崎容疑者、守屋容疑者にとって不利となる情報を流し続けたのは、山田オーナーの息がかかった配下の者たちだったといわれている。
しかし今度は東京拘置所に収監され、特捜部の取り調べを受ける宮崎容疑者、守屋容疑者が山田オーナーや久間元防衛相の癒着疑惑を暴く側になる。意図的な情報を特捜部に洩らす可能性がある。
民間会社の泥試合が続く中で、果たして政界ルートに特捜部の捜査が伸びるのか、しばらくは様子をみるしかない。

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