プーチンの不正選挙で与党連合が九割を占める異常現象はロシア国民の絶望なのか。米国が遺憾の意を表した。プーチンの圧勝に異議を唱えたのだ。
全欧安保協力機構(OSCE)はロシアに70名の選挙監視団しか派遣出来ず、不正選挙の実態を把握できなかった。前回のロシア総選挙では、OSCEが400名の選挙監視団をロシア各地に派遣した。
12月2日のロシア下院選(定数450)は、まさしく不正、偽造、開票操作などデタラメな選挙で、「儀式でしかない」(英誌エコノミスト、12月1-7日号)と酷評されている。
なにしろ、ロシア共産党ですらジュガーノフ党首が「選挙は不正がある」と抗議しているくらい。
ともかく選挙ではプーチン大統領が比例の筆頭に並ぶという与党「統一ロシア」が63・3%を獲得して圧勝した。「個人的なプーチンの勝利であり、与党は、これで道徳的権威が確立された、などと言っている」(ワシントンポスト、12月3日付け)。
大統領三選が可能とする憲法改悪が可能となる定数の3分の2、つまり300議席を超える見通しだ。
統一ロシアは選挙戦を有利に戦うため、プーチン大統領を連邦名簿のトップにおき、大統領の任期中は兼職が認められないにもかかわらず、これで次期首相につくという権力維持のシナリオに展望が開けた。
このロシア下院選挙は、プーチンの人気に便乗した与党が連合を組んで、まずテレビの買収に始まり、マスコミのプーチン批判を許さず、野党候補の拘束、逮捕、抗議デモの禁止、そのうえ、7%の得票がない政党からは議員が選ばれないとする仕組みに変えた。まるでプーチン大政翼賛会選挙だった。
それでも国民の多くが不平を漏らさなかったとすれば、過去数年の石油暴騰により、生活に多少のゆとりが生まれたから。これを再び冷戦時代の貧窮に戻されたくないと言う、ささやかな願望のなせる業だろう。
結果、議席獲得に必要な7%を超えた政党は最大野党の共産党(11・7%)、プーチン政権寄りの極右政党「自由民主党」(8・4%)、政権支持の中道左派政党「公正ロシア」(8・0%)の4党だけ。
議席配分は「統一ロシア」が309、「共産党」が58、「自民党」が44、「公正ロシア」が39と予想される。かくて共産党を除けば、プーチン礼賛の三派で全議席の9割近くを占める。
西側寄りの改革派「ヤブロコ」、や「右派勢力同盟」はいずれも1%台に留まり、議席を獲得できない。
このような不公正な選挙結果を受けて、米ホワイトハウスのジョンドロー国家安全保障会議(NSC)報道官は「選挙不正の疑いが伝えられている」としてロシア当局に調査するよう求めた。米政府が厳しくプーチン批判を展開したことは記憶に留めるべきだろう。(「宮崎正弘の国際ニュース・早読み」より)
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1258 あれが公正選挙と言えるのだろうか 宮崎正弘

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