航空自衛隊の次期主力戦闘機としてレーダーに捕捉されにくいステルス性を備えた米空軍のFー22ラプターの導入計画があったが、米議会がFー22の禁輸措置を延長したため宙に浮いていた。
世界各国ともステルス戦闘機の開発に力を入れており、ロシアや中国も開発を急いでいる。ステルス性が米技術の専売特許でない時代はもうすぐ来る。毎日新聞によれば、防衛省は独自にステルス技術を搭載した国内初の実験戦闘機の開発計画に着手したという。開発総経費は466億円。初飛行は11年度中を目指している。
米軍は1980年代後半からFー22ラプターの開発を進め、2005年12月にラングレー基地(バージニア州)に初めて実戦配備した。禁輸措置をとったので1機250億円と割高になった。
レーダーに捕捉されにくいステルス性を備え、マッハ1.5を超す速度での超音速巡航が可能で、高い機動性が特徴。08年1月までにアラスカ州のエレメンドルフ基地にも配備し、グアムへ定期的に展開する。07年2月、米国外では初めて沖縄の嘉手納基地に暫定配備されていた。ニックネームの”ラプター”は猛禽(もうきん)の意味。
日本は武器輸出が禁止されているから、やはり割高になるのは避けられない。ただ、このステルス性は戦闘機だけでなく、潜水艦でも敵のソナーによる探知を最小化する技術として応用が可能とみられている。敗戦間際の日本海軍では、試作潜水艦のセイル側面を外向きに傾けることで、米軍レーダー電波の反射を海面へ向ける工夫を始めていた。
ステルス性は万能ではない。各国ともステルス戦闘機の開発に力を入れる一方でステルス機の探知技術にも力を入れている。私見だがステルス技術はロシアが米国に追いつき、追い越すのではないかとみている。
原油高景気の恩恵を受けている産油国ロシアは、軍事技術に採算性を度外視して開発できる強味がある。日本や米国は常にコストと開発費という制約がある。ステルスの歴史をみてもソ連の科学者ピョートル・ウフィムツェフによって、ステルス機開発での重要論文が発表されている。1957年のことである。
面白いのはどれだけ高性能なステルス機も飛行機雲によって容易に発見されることである。科学技術が進歩しても自然現象まではコントロールできるには至っていない。これらの問題点があるにしても世界の最高レベルに達している日本の技術力からすれば、米国のFー22ラプターを買わなくても、日本独自のステルス戦闘機を開発することは可能であろう。
その時になって米国が慌てて禁輸措置を解き、Fー22ラプターを買ってくれと言ってきたら、思い切り買い叩いてやるがいい。
<レーダーで探知されにくいステルス技術を搭載した国内初の実験戦闘機に関する防衛省の開発計画の概要が5日分かった。開発総経費は466億円で、名称は「心神(しんしん)」。来年度から6年かけて飛行試験も含めた開発を進める予定で、初飛行は11年度中の実施を目指す。
開発計画によると、「心神」は全長14メートル、重量9トン。急速な方向転換や超音速飛行を可能にする高機動エンジン(XF5―1)も初めて搭載。飛行中に全方位的に周辺の探査ができる高性能レーダーの研究開発も並行して進める。
ロシアはすでにステルス戦闘機の開発を進めており、中国も開発を急いでいるとされる。こうした事情を踏まえ、実験機を「仮想敵機」として日本のレーダーシステムで捕らえ、防空能力を高める狙いがある。
一方で次期主力戦闘機(FX)の機種選定は、有力候補だった米国のF22(ステルス機)の禁輸継続が延長され先送りされた経緯がある。今回の実験機には、将来的にステルス機の自主開発も選択肢であることを示し、FXをめぐる国際交渉力を高める思惑も働いている。(毎日新聞)>
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1263 日本独自のステルス戦闘機開発 古沢襄

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