ガソリンの高騰を始めとして物価がじわじわと上昇しています。行きつけのコンビニに行っても、普段買っているおにぎりやパン、ジュース類が十円から十五円程度、値上げしています。
この物価の上昇の背後に、石油の高騰があることは経済学者の多くが指摘するところです。一時期、1バレル60ドル前後だったのが、最近では90ドルを超えました。この石油の高騰の背景には、イランなど中東情勢の不安定化、ロシアの売り惜しみ、中国の買占めによる供給不足などが理由として挙げられますが、加えて日本の場合、特殊な理由が加わります。
第一に、石油の九割を実は中東から輸入していますが、そのタンカーの警備を我が国は自前で行うことができません。しかも、国際テロ組織は海上テロを行う能力をもっているため、中東やインド洋での危険は高まっています。
だからこそ、アメリカやパキスタンなどとともに我が国もインド洋に自衛隊を派遣し、海上航行の安全を確保しようとしてきたわけですが、それでも、実際に日本の自衛隊が日本のタンカーを守ることはできないため、日本のタンカーにかけられる保険料は他国に比べて圧倒的に高いといわれています。
恐らく、日本の自衛隊がインド洋から撤収すれば、インド洋の危険は高まり、それが日本のタンカーの保険料の高騰、そしてそれが日本の石油の値上げ、物価の高騰という形で、我々の財布に直撃してくることになります。
「生活が第一」と訴えた民主党が、どうしてこんな簡単な構図を理解できないのか、それとも、物価高に追い込むことで自民党政権を打倒しようという作戦なのか。もし後者ならば、国民の生活を犠牲にして権力を握ろうということになります。
第二に、中東情勢が不安定なため、日本の民間企業はアフリカ等のエネルギー資源開発に注目していますが、実は、中東依存からの脱却はうまくいっていません。
例えば、インドネシアからは大量の液化天然ガスを購入していますが、インドネシア政府は石油の高騰という事態を受けて、自国のエネルギー需要に対応することを優先させ、日本に対しては売り惜しみを始めています。
ただし、中国系の海賊の横行に悩むインドネシア政府としては、海賊を排除するスピード・ボート(小型巡洋艦)を日本政府が譲渡してくれるならば、日本を優遇してもよいという条件を出しましたが、日本政府は、スピード・ボートを譲渡することは「武器輸出三原則違反の恐れがある」といって、断ってしまいました。
アフリカでも、有望なエネルギーの産地はたくさんあるのですが、これらを現在、中国政府が買い漁っているのに対して、日本は傍観したままです。正確に言えば、傍観せざるを得ないのです。
アフリカで油田の権利を買おうとすると必ず、相手国政府から「油田の安全が脅かされたとき、日本は軍を派遣できるのか」と問われるというのです。
要するに、政治情勢が不安定で、テロが多発するアフリカ、中東、そしてアジア地域で、「軍」を活用できない日本は、いま、中国の後塵を拝し、三等国へまっしぐらに転落しつつあるのです。
かくして、「台頭する中国、衰退する日本、中国を選ぶアメリカ」という国際政治のトレンドがはっきりしつつあります。
具体的に数字を挙げると、まず、「中国の国防費は日本の3倍」です。中国の2007年の国防予算が前年実績比17.8%増の約5兆2600億円で、1989年以来19年連続で2ケタ増になると発表。公表額だけでも日本の防衛予算(07年度、約4兆8000億円)を初めて上回るが、「実態はその2~3倍」(米国防総省報告)。
国防費だけではありません。「中国の米国への投資は、日本の3倍」です。米財務省統計で2006年1年間の対米純証券投資総額は中国1018億ドル、日本341億ドル。うち米国債は中国377億ドルに対し、日本は20億ドルに過ぎません。
軍事的にも経済的にもアメリカにとって日本の三倍もの力を持つように見える中国と、国内のスキャンダルを理由にインド洋での自国のタンカー警備さえも手を引き、「戦線離脱」をする頼りにならない日本、アメリカの現実的な政治家たちが、どちらを選ぶのかは、目に見えています。
確かに、中国共産党政府は、環境問題、経済格差、人権侵害など多くの課題を抱え、その発展は疑問視されています。しかし、我が国もまた、国内のスキャンダルと憲法九条の呪縛によって、国際政治の中で「相手にされない」ようになってきていることも事実です。
軍事力を国際政治で活用できない我が国は、中国の台頭を受けて、急速に衰退の道をひた走り、それが物価の高騰という形で、我々の生活に直撃してくる時代に入ったということを念頭に置きつつ、憲法改正の戦略を練り上げていくべきだと思います。
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