最近は流行らないが、一時は”武闘派(ぶとうは)”という言葉がさかんに使われた。タカ派と同義語という人もいるが、私は政治用語としては区別している。米共和党のジョージ・W・ブッシュ大統領、ディック・チェイニー副大統領、ドナルド・ラムズフェルド前国防長官、ジョン・ボルトン前国連大使などネオコンは明らかにタカ派・”The hawks”だが武闘派とはいわない。
日本でいえば岸信介元首相、安倍晋三前首相、石原慎太郎東京都知事、平沼赳夫衆院議員らもタカ派。強硬的な政治信条を持つ人たちである。
武闘派というと政治理念とは関係のない政治手法上の強硬派だのことだと思っている。いうならヤクザの暴力抗争で出てくる武闘派男のようなものだ。政治理念が欠落しているから、私は”突っ張り男”と称して軽蔑している。
誰とはいわないが、最近の国会では武闘派が大手を振ってまかり歩いている気がしてならない。国会はヤクザの出入りの場ではない。武闘派にかき回される国会などは願い下げである。
”チキンホーク(Chicken hawk)”という言葉がある。臆病なタカ派のことだが、自らは戦場に出ずに後方で指揮をとって、タカ派ぶる軍人や政治家のことである。戦局が不利になれば、口を拭って責任転嫁する手合い。理念なき武闘派といって良い。
北朝鮮の金正日総書記はさしずめ武闘派。それもチキンホークの類。突っ張っていれば相手が妥協してくれると思いこんでいる。お相手しているヒル米国務次官補はハトでもタカでもない。米朝交渉を成功させようという功名心に駆られたお役人に過ぎない。
それにしても礼儀知らずのお役人である。来日したヒル氏は福田首相宛のブッシュ大統領から親書を預かってきた。本来なら首相官邸を表敬訪問して親書を届けるのが礼儀であろう。成田空港で佐々江アジア大洋州局長に手渡してハイ、サヨナラだっという。
阿比留瑠比さんは次のように言っている。
<北朝鮮を訪問したヒル氏は、トランジットのために降りた成田空港まで外務省の佐々江アジア大洋州局長を呼びつけるというやり方に問題があります。また、この際、ヒル氏は福田首相あてのブッシュ大統領の親書を携えてきたわけですが、そういう重要文書を首相官邸にも持っていかず、成田空港で「はい、これ」という態度(?)で佐々江氏に手渡したのも非礼だといえるでしょう。
外務省の高官は「テレビで、ヒルと並んでぶらさがりインタビューを受ける佐々江氏を見たが、その顔は憮然としていた」とも語っていました。
北朝鮮のテロ支援国家指定を早く解除したいヒル氏からすれば、拉致問題にこだわり続ける日本は煩わしいのだろうし、北朝鮮の核問題に関しては米朝が直接交渉するから日本の出る幕はないというわけかもしれませんが…。
ただ、たかだか米国の役所の「局長級」の立場でしかないヒル氏が、こうまで日本に対して傲慢な態度をとれるのは、米国にとっての日本の重要性が相対的に低下し続けているからだろうなとも考えました。>
武闘派首領のお相手で振り回されたヒル氏は、礼儀心まですっかり麻痺してしまったのだろうか。
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1282 武闘派論考 古沢襄

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