1310 ウォール街の衝撃 宮崎正弘

中国投資公司がモルガン・スタンレーへ50億ドルもの緊急出資。天下のウォール街の名門=老舗の10%株主はチャイナ。
ウォール街の衝撃は正確に日本に伝わっていない。――金融黄禍論とでも言えばいいのか。
昨日まで貧乏に喘ぎ「カネを貸してくれっ」と先進工業国に居丈高にせがんでいた国が、天下の名門ウォール街の、老舗中に老舗モルガン家の銀行に、ぽんと50億ドルを出資しちゃうんですから。
中国語メディアは意気揚々と叫ぶ。
「中投公司、50億美元参股摩根士丹利」(多維新聞網、20日付け)。この「摩根士丹利」がモルガンスタンレーを指す。正確にはモルガンスタンレーの9・9%株主となって、「日常の経営、管理には口を挟まない。利益が見込めるので株主配当を狙う」と記者会見した。
ともかくこれで2000億ドルの原資で設立された中国の国家ファンド「中国投資公司」は、五月に米国ヘッジファンド大手の「ブラックストン」(「黒石」とかくとイメージが悪いので漢字は「百仕通」と宛てる)への30億ドル出資につづく「快挙」を成し遂げた。
率直に言ってハイリスク・ハイリターン、日本の公共金融機関なら、まずは手を出さない大胆な投資行為である。
サブプライムの破綻でシティもメリルリンチもCEO交替に追い込まれたが、シティは、アブダビ投資庁を拝み倒して、砂漠の首長らから75億ドルの出資をえた。
原油高騰で潤い、しかも増産に応じないのだからペトロダラーは強い。嘗てシティの経営危機を救ったのも砂漠の王族(サウジの皇太子がポンと増資して倒産の危機を救い、最大株主となったのです)だった。
ほかの欧米列強は、出資先をアジアに求めた。
日本には奉加帳を回して済むことだが(日本はなめられてますね。どうせ、欧米の銀行と業務提携の強い邦銀はパートナーとしての出資を強要される)、アジアの国家ファンドは強者が揃った。
UBS(ユニオンバンク・オブ・スイス)は結局、テマサクから100億ドルを調達した。「テマサク」とはシンガポールの国家ファンド、アブダビ、サウジ、ドバイなどと並ぶ大手。最近も中国東方航空の25%株主になったが、テマサクは同時に中国銀行、中国工商銀行の保有株を大量に売却した。
南アのスタンダード銀行に55億ドル出資して筆頭株主となったのは中国工商銀行である。先述したブラックストンへの30億ドル出資、モルガンスタンレーへの五〇億ドル出資は、中国国家ファンドだが、ほかにも中国開発銀行がバークレー銀行にぽんと三〇億ドル、CITIC(中国国際投資公司。国務院直営)はベアスターンズへ一〇億ドル。
一体、この有様はどうなっているか、日本のエコノミストで説明できる人はいるのか?
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