1320 世界銀行が中国経済の評価を大幅に下方修正 宮崎正弘

誰も信用しないが、中国の国家統計局が公表したインフレは6・9%である。
中国人民銀行(中国のFED、日本の日銀の相当)は、ことし六回利上げし、五回も銀行預金利率を上げた。つまり消費を抑制して物価の高騰を押さえ込み、預金を増加させることによって通貨供給量を調整するというマネタリストの真似事。(マネタリストの総帥ミルトン・フリードマンは中国経済に批判的だったが。。)。
効き目がない。インフレは一向に収束せず、不動産価格は主要70都市部の先月統計でも10・5%の値上げが見られる。
ちなみに中国の公定歩合は7・47%。 預金利率(一年定期)は4・14%(12月25日現在)。
これではインフレ率に追いつけず、不動産投資のほうにまだ妙味があり、株式の高騰も預金利率よりははるかに高い。金は利率の高いほうへ流れる。
中国の株価は11月6日をピークに30%ほど下落しているが、それでも過去一年間でCI指標は147%の上昇だ。
いまの中国経済にとって、ズバリ適正な政策はなにか、と言えば人民元切り上げである。
人民元は2005年7月の2・1%切り上げから今日までに約12%切り上げになっている。人民元が理論的にあと20%ていど高くなれば、原油輸入代金が20%以上やすく買える。インフレはほぼ収束するほどの効き目がある。円高=日本がながくデフレに悩んだように。
さて世界銀行は今週、中国経済の評価を40%下方修正する(ヘラルドトリビューン、12月21日付け)。
購買力平価で世界経済比較をおこなった場合、中国は米国についでナンバーツーの位置にある。2005年評価で中国の購買力平価インデックスは88億ドルと見積もられた。今回(07年度)の予測では、53億ドル。
購買力平価のもっとも単純な数式は「ビッグマック指標」とよばれるもので、世界各地のマクドナルドの大ハンバーガーの価格から、為替水準を調整し、物価水準を推定し、ガソリン、家屋、レンタル、肉と野菜の価格を標準化して、その国の生活水準をはかるもの。
世界第二位といえば、それなりに生活がしやすいということになる。
だが中国の大都市と沿岸部の庶民の統計はやや正確にとれても、地方都市、砂漠の奥、密林の闇の経済が不明であり、もうひとつ致命的なのは地下経済である。
地下経済は表向きの数字に20%ほど加える必要があり、表の銀行を通さない闇金融、地下銀行の繁栄をみていると、やはり中国経済を数式化して理論だてるのは無理である。
大都市のスーパーマーケットの価格帯が、たとい統計のとおりであるとしても、そのスーパーへ通って買い物できる階層と、スーパーにもいけない八億農民との乖離を数式化できないところに、中国経済を判定する闇が存在している。
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