1385 サンマに強い福田夫人 古沢襄

東京・野沢の福田邸はお世辞にも広いとはいえない。東京オリンピックの頃だから40年以上も前のことだが、その後改築して広くしたとしても程度が知れている。狭い応接間が私邸での記者会見に使われていたが、私は奥の炬燵部屋で福田赳夫氏の夫人からお茶を振る舞われる方が多かった。
野沢から特ダネなし、私邸の記者懇談に出ていてもつまらないからである。毎日新聞の江口宏氏などは、もっと徹底していた。炬燵部屋で福田夫人と話をしているところに、赳夫氏が帰ってくる。
それを機に立ち上がって「じゃー帰るか。ジョーさんどうする?」と江口氏は帰り支度を始めた。福田夫人はニヤニヤ笑っている。仕方がないからジョーさんこと私も帰り支度をした。入れ違いに赳夫氏が炬燵部屋にきて、ハチ合わせになることもあった。
「よう!」と口を”へ”の字に曲げた赳夫氏に声をかけられたものである。この二人は新宿あたりで飲み直すつもりだな、という顔をしている。
福田夫人の人柄もあるが、福田邸で寒い思いをしたことがない。狭い家で、天井も高くないから家の中が暖かい。それでも寒い時には炬燵部屋で福田夫人にお茶でも振る舞って貰えば暖まる。
江口氏の発案で福田夫人に麻雀を教えたことがある。四人集まらないので、三人でやる”サンマ”麻雀。最初はいいカモだった福田夫人が、メキメキ腕をあげて江口氏も私も敵わなくなった。福田夫人はサンマしか知らない。私たちは福田邸でしかサンマをやらない。おまけに炬燵麻雀だから眠くなる。サンマ麻雀というと福田夫人を想い出す。
赳夫氏と大蔵省に同期入省した前尾繁三郎邸は渋谷・松濤にあったが、天井が高くて、部屋数が多い豪邸。ストーブを入れてくれるのだが、いつも寒い思いをした。
福田首相が通常国会を前にして、野沢の自宅から首相公邸に引っ越した。記者たちに「寒い。風邪ひきそう」と言ったそうだ。それで暖かった福田邸を思い出している。
<福田康夫首相は14日、東京・野沢の自宅から首相官邸に隣接する公邸に引っ越した。すでに家財道具は搬入済みのため、首相は午前中に手提げかばん1つを持って公邸入り。昨年9月の就任から約4カ月が過ぎ、衆参のねじれで波乱も予想される次期通常国会の召集を前にようやく“臨戦態勢”を整えた。
首相は同日夕、都内で記者団に、公邸での生活について「寒い。風邪ひきそう」。ただ、普段から環境保護の取り組みを訴えているだけに、暖房の強化には「どうしようかな。温暖化の問題と、悩むね」と漏らした。(日経新聞)>
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