<【モスクワ9日共同】ロシア空軍の爆撃機が日本の領空を侵犯したとされる問題で、ロシア空軍の広報部長は9日「空軍機は所定の任務を遂行したもので、日本の領空は侵犯していない」と述べ、領空侵犯を否定した。タス通信が伝えた。一方、東京発のタスによると、日本の外務省が在日ロシア大使館の参事官に厳重抗議したことについて、ロシアの外交当局者は抗議の内容を政府に報告した上で対応を決めると語った。(共同)>
ロシアが日本の領空侵犯を否定するのは想定の範囲内だが「ロシア空軍機が所定の任務を遂行した」と言った意味が気になる。米ソ冷戦時代にソ連の爆撃機が日本の太平洋側を領空侵犯スレスレで南下し、その度に航空自衛隊の戦闘機がスクランブルをかけた。
われわれはソ連の”東京急行”と称したものである。相手国の防空体制を探る目的で行う軍事行動で南下ルートは一定している。米国も中国の防空体制を探るため、同じ様な軍事行動をとる。中国空軍のスクランブルをかけられて、米軍機が海南島の基地に強制着陸させられた事件も発生した。
冷戦時代が終わり、ソ連が崩壊してロシアになってからは”東京急行”は姿を消した。それが再び現れたとすれば、ロシア軍部の目的は何か?日本側の北方四島の返還を求める動きが再燃しようとしてる時に牽制する狙いがあるのではないか。
防衛省によると、九日午前七時三十分三十六秒から同七時三十三分二十四秒までの二分四十八秒間にわたり、東京の南方約五百キロの伊豆諸島南部にある嬬婦岩(そうふがん)上空をロシア軍の爆撃機TU95が領空侵犯したという。
航空自衛隊は千歳(北海道)、三沢(青森)、百里(茨城)の各基地からF15戦闘機など二十二機と浜松基地(静岡)から空中警戒管制機(AWACS)、三沢基地からE2C早期警戒機を各一機緊急発進させている。
ロシア爆撃機TU95は、樺太南方から北海道東部を経て太平洋を南下、伊豆諸島上空を領空侵犯後、自衛隊機の警告を無視して一転し、同じルートをロシア方面に戻った。まさに”東京急行”と同じ行動である。政治的な示威飛行とみるべきであろう。
航空自衛隊のF15戦闘機の練度からすれば、TU95爆撃機を撃墜するのは容易いが、相手が銃撃を加えないかぎり軍事行動をとることは出来ない。過剰な反応をすることはパイロットにも禁じられている。
日ロ友好関係を再構築しようとしている矢先だけにロシア極東空軍の行動は軽率のそしりを免れない。外務省が即座に抗議したのは当然のことである。五月に福田首相がモスクワを訪問、プーチン大統領と初の首脳会談を持つ予定なのだから、一言釘をさすことが必要ではないか。
再度、”東京急行”が現るようなら福田首相のモスクワ訪問は無期延期すべきではないか。日本を仮想敵国視する国とは友好関係を結ぶわけにはいかない。
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