中国の民間企業からの共産党入党は298万人と判明。4%の党員が共産主義と無縁のプライベート・セクター。
最近、ジョン・ホプキンス大学のケレー・ツァイ教授が書いた『民主主義なき資本主義』(コーネル大学出版会)に依れば、江沢民の「三つの代表論」(要するに先進的指導は共産党が行い、ビジネスマンも入党を許す)以来、共産党員の数だけが鰻登りに増えている趨勢のなかで、民間企業からの入党が298万人前後にも上っている実態が分かった。
70年代の中国の統計には「民間企業」の数は記録されていない。
無視してもいいほどの数でしかなかった。そもそもマルクスの『資本論』に従って、民間企業は8人以上の従業員を雇ってはならないというへんな規則が1988年まで存在したからだ。
トウ小平の「改革・開放」から30年が経って、民間企業の数は個人商店も含めると2900万社。雇用は二億人を突破している。
ちなみに国有企業の雇用は激減を続けており、4400万人前後と見積もられ、外国企業の雇用が6000万人を超えて、逆転している模様である(ただし国有企業が49%以内の株式を民間に売却して「民営化」を称している企業を含める)。
中国における「中産階級」は、何清蓮女史の研究に依ると、およそ16%(同氏『中国現代化の陥とし穴』草思社刊)。
なかでも中産階級で、外国企業のマネージャー・クラスはかなりの高級をはむので、郊外に瀟洒な住宅、マイカー族が大量に出現した。
17日発売の『タイム』(2月25日号)の表紙は、郊外に贅沢に暮らす新中国人の特集で、「長征」をもじって「短征」とし、住宅の金色の鍵を飾る若い中国人男女を描いている(特集タイトルは “CHINA‘s SHORT MARCH”)
さて、民主主義なき資本主義なるものは、可能なのか。
現在の中国の全体主義システムの下で、まったく自由な市場経済はありえず、民間企業は競争原理で動くよりも、地域のボスや共産党高官にたとえば商務、契約上の不履行などのもめ事の解決を頼み、裁判に訴えることはまれである。
外国企業は裁判を起こして司法解決を試みるが、あまりの法的不備、法制度の未熟などにより、解決策を見いだせず悲鳴を上げている。
「中国的解決」は、結局、中国人マネージャーにゆだねざるを得ず、たとえば「クレヨンしんちゃん」の商標を中国人に横取りされても、偽物の映画を作られても、海賊版被害を訴えても、西側の論理的納得というかたちで解決されることはない。
したがって自由民主法治をのぞむ民間企業の幹部さえも、とりあえずは「中国的解決」のために共産党員の登録をしておく仕儀となったのだ。
杜父魚ブログの全記事・索引リスト(2月18日現在1532本)
1520 民主主義なき資本主義? 宮崎正弘

コメント