1526 運慶の真作が海外流出か(2) 古沢襄

■運慶の作品
運慶の作と称されている仏像は日本各地にきわめて多い(特に二王像に多い)が、銘記、像内納入品、信頼できる史料から運慶の真作と確認されている作品は少ない。以下は運慶ないし運慶工房の真作といえるものである。
奈良・円成寺 大日如来坐像(国宝) – 安元2年(1176年)
奈良・興福寺 木造仏頭(重要文化財) – 文治2年(1186年)。興福寺西金堂(廃絶)旧本尊・釈迦如来像頭部。
静岡・願成就院 阿弥陀如来坐像、不動明王及び二童子立像、毘沙門天立像(重要文化財) – 文治2年(1186年)
神奈川・浄楽寺 阿弥陀三尊像、不動明王立像、毘沙門天立像(重要文化財) – 文治5年(1189年)
奈良・東大寺南大門 金剛力士立像(国宝) – 建仁3年(1203年)。運慶が中心となり、快慶、定覚、湛慶ら一門の仏師を率いて制作。
奈良・興福寺北円堂 弥勒仏坐像(国宝) – 建暦2年(1212年)。運慶の指導のもと源慶らが制作。
奈良・興福寺北円堂 無著菩薩・世親菩薩立像(国宝) – 建暦2年(1212年)。運慶の指導のもと運助、運賀らが制作。
神奈川・称名寺光明院 大威徳明王像 - 建保4年(1216年)
■運慶作と推定される作品
作風、納入品、伝来などから運慶作と推定される作品として次のものがある。
和歌山・金剛峯寺 八大童子立像(国宝)-建久8年(1197年)
京都・六波羅蜜寺 地蔵菩薩坐像(重要文化財)
栃木・光得寺 大日如来坐像(重要文化財)
愛知・滝山寺 聖観音菩薩・梵天・帝釈天立像(重要文化財)-建仁元年(1201年)
個人蔵 大日如来坐像 – 2003年から2007年にかけて東京国立博物館に寄託されていた。『鑁阿寺樺崎縁起并仏事次第』に見える、樺崎寺安置の厨子に建久4年(1193年)銘のあった大日如来像に当たるもので、その作風やX線写真によって知られる像内納入品の状況から運慶作品と推定する説がある。
■運慶作とする説がある作品
奈良・東大寺俊乗堂 俊乗上人(俊乗房重源)坐像(国宝) – 造像に関する直接の史料がないが、その作風から運慶の作とする見方がある。
奈良・興福寺南円堂 四天王立像(国宝) 本来の安置堂宇について諸説があるが、興福寺北円堂の旧像とする説がある。とすれば、運慶指揮下に運慶子息4人が分担して(持国天-湛慶、増長天-康運、広目天-康弁、多聞天-康勝)制作した像に該当することになる。(出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』)
<運慶作大日如来坐像の保護を求める要望書 平成20年2月19日
さる2月11日付読売新聞の一面トップに「運慶 米で競売へ」という衝撃的なニュースが掲載されました。競売は来る3月18日ニューヨークにて行われるとのことであり、海外流失が懸念されています。
この仏像こそ2004年に山本勉先生(現・清泉女子大学教授)の研究によって運慶作とされた大日如来坐像であり、すでに重要文化財になっている光得寺大日如来坐像と酷似することや、それよりやや古い建久年間前半の作品と考えられることから、もともとは足利義兼が建立した足利樺崎寺の下御堂(法界寺)に安置されていた三尺皆金色の大日如来像にあたるものとすることができ、足利氏と極めて深い関わりをもつ像でもあります。
現在史跡樺崎寺跡では、国庫補助事業を受け保存整備事業が進行しており、本像が安置されていたものと考えられる下御堂(法界寺)の跡も発掘調査によってその内容が明らかになっております。
このような折、発覚した運慶作大日如来坐像が競売にかけられるというニュースは、たいへん残念なことであり、もし海外へ流失するということともなれば、日本人の魂を持ち去られるにも等しく、痛恨の極みであります。
このようなことから、競売によって一部資産家や愛好家のもとに渡り死蔵されたり、外国の博物館や美術館に流出したりすることのないよう、国にて購入し恒久的な保護がなされますよう、要望します。>
<東京江戸博物館の学芸員 斉藤慎一さんの話
過日所用があって足利に行ってまいりました。すると足利では大変な事件が起きていたのです。足利氏のルーツともいえる樺崎寺跡の下御堂(法界寺)の本尊と思しき運慶作の大日如来像が発見され、さらになんとアメリカで競売にかけられるというショッキングなニュースでした。
ご存知のとおり下御堂には、「建久四年(1193)に建立され、本尊は三尺大日如来、地下には同日死した兄弟二人が埋められている」という願文があります。調査の結果、地下からは、20年ほど前ですが、平泉以後~13世紀初頭に位置付けられる火葬骨が詰まった白磁四耳壷2固体が、発見されています。
法界寺は願文どおりの墳墓堂です。願文、寺院跡、埋葬遺構だけでもすごいんですが、さらに本尊がとなれば例はないでしょう。
そもそも重文や国宝制度は、国外流出を避けるために設けられたものです。文化庁も交渉したらしいのですが、何億円という値段のため、うまく行かなかったようです。確実ではないのですが、足利市も1億ぐらいは何とかするのかもしれません。
皆さんのお力をお貸しください。お知り合いの方に広めていただいて、何とか突破口を見出したいと思います。>
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