1571 カトリックが増えたアメリカ 古沢襄

米大統領選を宗派の面でみておく必要があるかもしれない。ブッシュ大統領を支持した勢力がキリスト教右派だったのは周知のことである。アメリカ建国の歴史で、イギリス国教会の改革を唱えたキリスト教の清教徒(プロテスタント)が、メイフラワー号に乗ってアメリカ大陸に逃れた印象が強いので、この国はプロテスタント一色と思いがちである。
事実、ヒラリー・クリントンはプロテスタントの一派メソジストである。メソジストはイギリスでは大きくならなかったが、アイルランド、アメリカ、ドイツなどで広まり、アメリカでは第二のプロテスタント教団になっている。この信者はバラク・オバマには投票しないだろう。
だがヒラリーは中南米移民のヒスパニックからも支持されている。このヒスパニックはローマ・カトリック教会に帰依するカトリック。全世界に10億人以上の信徒を有するキリスト教の最大教派である。メキシコ、ブラジル、アルゼンチン、コロンビアなどに圧倒的な信者がいる。
以前のアメリカはプロテスタントが全国民の三分の二を占めていた。それが移民が増えるにつれて半分に減り、カトリックが拮抗する勢力になっている。メソジストのヒラリーが大統領になるためにはヒスパニックのカトリック票が欠かせない。
オバマの父親はケニア生まれのイスラム教徒。母親はカンザス州出身のスウェーデン系白人。ハーフの黒人系だが、ハワイで母親に育てられたプロテスタント。インドネシア人と再婚した母親と義父と一緒にインドネシアに住んだこともあるが、イスラム教とは関係ない。
第二次世界大戦以降のアメリカでは、プロテスタントにもカトリックにも属さない無宗教派が16%にもなったという。日本と同じような宗教離れが、ひとつの社会現象になっている。この無宗教派がオバマの熱烈な支持母体になっているのではないか。
一方でキリスト教原理主義といわれる保守派が隠然たる勢力を保持している。共和党のマケインがその支持を得られるかが注目の的になっている。マケインには無宗教派は投票しないであろう。
ケネデイ一家はカトリック。これがオバマ支持に回っている。西海岸にはカトリック信者が多いので、ケネデイ一家の支持はオバマにとって追い風となった。宗教的な面でケネデイ一家の支持は大きな意味合いを持っている。
それにしてもアメリカで宗教に関心を持たない若い世代が増加傾向にあるのは面白い。逆に”宗教は阿片”と言っていたソ連が崩壊後、ロシア正教が復活してシベリア奥地の教会でも信者が日参する現象を生んでいる。
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