キルギスタンで急拡大しているアンチ中国感情。労働者や不法移民が流入し、キルギス経済を脅かしている。
キルギスの首都ビシュケクには、最低に見積もっても一万人を超える中国人が住み着き、「市内市」(つまりチャイナタウン)を形成している。
廉価な中国産品、電化製品などを持ち込み、工場をたてると、いつのまにか中国人労働者が就労している。現地人の雇用はほとんどない。
このためバザールのキルギス商人らが抗議デモを展開し、政府に中国人を追い返せと要求し始めている。
中国はキルギスとの領土交渉をカネで解決した。すなわち2002年6月、キルギスのカ―エフ前政権は8・7ヘクタールの「キルギス領土」を中国へ売却し、「領土係争」を解決させたのだ。
ナショナリズムが爆発し、中国人外交官らふたりがキルギスで殺害された。アカーエフ大統領は、この犯人を秘密裏に中国へ送還しようとしたため同年3月17日に反中国デモが発生、暴動となってデモ隊の六人が死んだ。
小国とはいえども中国人の横暴は許せない、というわけだ。こうした因縁もあってキルギスにおける反中国感情は根深く、強い。
ところがキルギスには次から次へと中国人(おもにイスラム教徒)が密入国を繰り返し、この列に近年はインド、パキスタン、アフガニスタンが加わった。
地図をひもとけば明確になるようにキルギス南部は広大な国境線が中国の新彊ウィグル自治区と繋がっている。
労働を求めるわけでもなくキルギスの市民権を得るために入国も目立つという。理由はキルギスのパスポートを取得すると、ロシア、CISならびにトルコへのビザが不要だからである。
そして不法移民らは正業にはつかず、婦女子誘拐、人身売買に精を出し、臓器秘密売買のシンジケートなどを結成して、おとなしいキルギス人の心胆を寒むからしめている。
嘗てソ連に帰属した同国にはロシア人が弐割ほど居残り、さらにドイツ人が多くいた。ドイツ系はクルマの輸入などで財をなしたが、残留したロシア人は、いまさら戻ってもロシアに親戚もいない家庭が多く、微妙な均衡のうえにキルギスは綱渡りをつづけてきた。
この人口構成のバランスを崩すほど急激に流れ込む中国人と、その横暴に対して、キルギル人のナショナリズムの爆発が近いという観測があがっている(「ユーラシア・ディリー」2月28日号)
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