現代版「中ソ対立」は、表面のニコニコ外交から乖離し、本格化している。モスクワはもはや北京に最新鋭武器を売却したがらなくなった。
1992年から2005年までロシアが、最大顧客だった中国へ販売した武器は累計で260億ドル(同時期の武器全輸出額は580億ドルだったから中国が半分を占めた)。エリツィンもプーチンも北京へご機嫌伺いと注文取りにご用聞き。
なかには西側の脅威となるスホイ戦闘機を285機、四隻のソブレメニイ級ミサイル巡洋艦、そした12隻のキロ級潜水艦が含まれた。
ところが2006年から「最新鋭航空エンジン」「戦略爆撃機」など、ロシアは中国への売却を認可せず、2007年のモスクワから北京への武器輸出は殆どゼロとなった。
この百八十度もの転回はなにが原因なのか?
中国はロシアから得た最新鋭武器を整合することに時間をかけた結果だろうと言われたが、いまだに自主開発のスホイ改良型ジェット戦闘機は中国領空にみえず、改装工事中と言われた空母ヴァリヤーグもなりを潜めたままだ。
ロシアは、新顧客としてアルゼンチン、ベネズエラをつかみ、また旧同盟でもあり、武器の顧客でもあるインドには新鋭武器を片っ端から売却している。
ロシアにとって「中国は潜在的脅威であり、嘗ては中ソ国境に60万兵力を配備してにらみ合った関係。いずれ我々にも向けられる軍事力の向上のために我々が中国に技術を提供するのはおろかである」という観測が濃くなる。
といっても過去十数年は武器以外にモスクワは海外へ売るモノがなかった。石油と天然ガスを高値で売り出してから、ロシアの態度は変わったのだ。
メドベージェフ新政権はプーチンの資源外交を継続する。
となれば地政学的にインドを利用することが当面の眼目となり、インドの軍事力が高まれば、中国を背後から牽制できるという思惑が働く。
「モスクワは中国に提示していない最新鋭のミグ35をニューデリーにはオファーしている。これまでにもスホイ30型戦闘機を140機、改良バージョンを40機輸出した」(NYタイムズ、3月3日付け)。
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1592 現代版の中ソ対立 宮崎正弘

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