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<[東京 13日 ロイター] 武藤敏郎・日銀副総裁の総裁昇格案に対する衆参両院の決定が同意と不同意に分かれ、政府・与党と民主党など野党の間で事態収拾に向けた動きが13日、本格化してきた。
自民党の大島理森・国対委員長と民主党の山岡賢次・国対委員長が13日午後、国会内で会談し、政府に対して17日までに新たな候補者案を提案するよう要請することで合意した。現時点では、17日に政府案を内示し、18日に候補者の所信聴取と質疑を実施。19日に本会議を開き採決する日程が想定され、次の政府案提示が空席回避のラストチャンスになりそうだ。
自民・民主国対委員長会談は、日銀総裁人事に関する13日の衆院本会議での採決を受け、実施された。衆院本会議では、政府が提示していた武藤氏の総裁昇格、白川方明・京大大学院教授と伊藤隆敏・東大大学院教授の副総裁就任に同意したが、12日の参院本会議において武藤氏と伊藤氏は不同意とされており、一連の国会手続きで白川副総裁の就任だけが確定することとなった。
これにより、19日の現正副総裁の任期満了まで総裁が決まらない場合、日銀法の規定により、白川氏が総裁の職務を代行する。
ただ、与野党ともに米サブプライムローン(信用度の低い借り手向け住宅融資)問題に端を発した金融市場の混乱が深刻化する中で、日銀総裁の空席は避けたいというのが本音のようだ。自民・民主の国対委員長会談では、空席を1日も作らないことが望ましいという点でも一致した。
山岡国対委員長は、武藤氏に代わる候補者が出てくるとの理解を示したが、大島国対委員長は武藤氏が再提案されるかどうか言明を避けた。
人選について、福田康夫首相は13日夜、記者団に対して「あす、あさってといろんな方から意見を聞きながら、よく考えたい」と述べて、週末に向けて熟考する考えを示した。
政府・与党内には、あくまで武藤氏の総裁就任を押し通すべきだとの声も依然としてある。ただ、民主党が同意する見通しは全く立っておらず、その結果として総裁空席になった責任が福田首相はじめ政府・与党にかかってくるリスクが残る。一方で、与党内からも、武藤氏の再提示は、人事案に適用される明文がないながら「一事不再議」に反することもあり、政治的に難しいとの声も出ている。
新しい候補者を選ぶ場合、民主党内から適任との声も出ている山口泰・前日銀副総裁などが考えられるが、白川氏の副総裁就任で、同じ日銀出身の山口氏は起用しにくいとの思惑も出ている。
また、白川副総裁候補を新たに総裁候補に選び直して提案する選択肢も取りざたされている。民主党の鳩山由紀夫幹事長は12日のTBSラジオの番組で、白川氏の能力などから総裁候補になりえるとの見解を示していた。
<総裁空席回避の窮余の策>
一方、山岡国対委員長によると、大島国対委員長は日銀法改正の可能性にも言及した。これは、現日銀正副総裁の任期切れが19日に迫る中で、緊急避難的に総裁の任期を延長させる法改正を念頭に置いていると見られる。
福田首相は「いろいろな考え、意見があると思う」と述べて検討の余地をにじませ、「(日銀総裁の)空白は作りたくない。そういうことは避けたいと思っている」との認識を示した。
日銀法24条では、総裁、副総裁および審議委員の任期を5年と定めており、再任も可能としているが、暫定的な任期延長などは記されていない。
米国では、現職の米連邦準備理事会(FRB)議長の任期が切れても、後継者が議会で承認されるまでの間、臨時議長として継続できる制度となっている。現在のようなねじれ国会で、政府の日銀総裁候補が国会で同意されなかった場合を想定していない日銀法の不備ではあるが、与野党間の駆け引きの末に、窮余の策で一時しのぎ的な対応をすることの是非も問われそうだ。
関係者によると、与野党で認識が一致できれば法改正自体は、それほど時間をかけずにできるとしている。(ロイター)>
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1642 空席回避のラストチャンス 古沢襄

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