二年前の朝鮮日報に興味ある記事が出ている。二〇〇六年六月にアメリカで出版された「ショーダウン(対決)」という本の紹介記事。中国と日本が二〇〇九年八月に尖閣諸島の領有権問題と靖国神社参拝問題で衝突し、局地戦争になるが中国が日本を屈服させることで決着が付くという内容。
荒唐無稽な話なので日本では、この本は話題にすらなっていない。しかし、執筆者が米国防総省副次官補だったジェッド・バビン氏と軍事専門家エドワード・ティンパーレーク氏の共同執筆だから穏やかでない。
さらに興味があるのは、日中の局地戦争が発生しても、アメリカは中国との衝突をためらって、日本を支援しないと国防総省の元副次官補が想定していることだ。台湾で独立志向が強かった陳水扁総統に対しても、中国との衝突を避けるために軍事支援をストップしている。これがアメリカの本音であろう。
この当時、中国の国内で日中戦争のシナリオ論争が起こり、「青年参考」電子版など中国のマスコミが報じていた。この中で日本の軍事ジャーナリストが「中国は2000機余りの戦闘機と70隻余りの潜水艦を保有しているが、大部分は老朽化したもので、日本の少数精鋭に勝つことはできない」との見解を示していた。
ご丁寧にも日本の雑誌『SAPIO』が日中戦争特集記事で中国の軍事力を低く評価し、中国海軍は大規模な戦闘訓練の経験が不足しており、遠洋での継戦能力がなく、敵潜水艦を探知する技術も不足しているとした分析まで紹介している。
その一方でカナダで出版されている軍事専門誌『漢和防務評論』が、日本の海上装備や技術水準は中国よりも相当先に進んでいるが、両国間の格差は急速に縮まっているとの反論も合わせて紹介した。
アメリカと中国で日中の局地戦争論が面白おかしく掲載されていたとは知らなかった。下らない小説がきっかけだったから、知ったとしても一笑に付しただろう。だが、その後の二年間で中国の軍備拡張は著しい。とくに海軍力の強化は突出している。
事態はカナダの『漢和防務評論』の予測通り、日中の海軍力の格差は縮まっている。東支那海のガス田問題や尖閣諸島の領有権問題は、話し合いがつく見通しすらない。日本側が自制すれば軍事衝突は避けられると思うが、チベットに対する中国の強引な介入をみていると不安感が漂う。銃口から生まれた政権ほど危険なものはない。
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