「二〇〇九年八月の局地戦争」を描いた「ショーダウン(対決)」をいち早く日本に紹介したのはワシントン特派員の古森義久氏だったと記憶している。その後も講演会などで、この本をとりあげ、日本人の安全保障意識の覚醒を説いていた。
同氏のコラムでもアメリカの元国防総省高官二人が書いた「ショーダウン」を取り上げ、日本の国家存亡の破局シナリオを思い出すとまで言い切っていた。あれから二年経つ。
「ショーダウン」の原文は読んでいないのだが、その翻訳の一部を読むことができた。面白いのはアメリカ初の女性大統領が登場している。ドロシー・クラッターバック大統領である。容易にヒラリー・クリントン大統領を想定していると分かる。
<「センカク? それは何ですか?」歴史上はじめて「女あるじ」として大統領執務室に入った記念すべき日だというのに、この相手は何を言っているのだろう?ドロシー・クラッターバック大統領はいらだちを隠さなかった。>の下りがある。
大統領就任パレードがようやく終わり、パーティが始まろうというときに、日本の首相から尖閣諸島で日中が武力衝突の危機が迫ったという電話が入ったという設定。
<「尖閣、尖閣諸島であります、マダム・プレジデント。沖縄の近くにある島です。天然ガスが豊富なのです。我が国の領土でありますが、中国と台湾もそれぞれ領有権を主張しております」>さて、日本の首相は誰になっているか?二〇〇九年夏だから福田首相ではないかもしれない。
「首相閣下、なるほど、お話は分かりますが、それほど緊急の問題なのですか?」とヒラリー(?)は冷たい。
<「緊急の問題です、大統領閣下。ごく小さな島々で、上陸は容易であります。しかも中国とロシアの海軍がこの尖閣諸島の近くで演習を行っております。共同演習は初めてです。中国とロシアが外交軍事協定を結んで侵攻してくるのではないかと、懸念しておる次第であります」>と日本の首相は切々と訴える。
<「よくお知らせいただきました、ありがとう、首相閣下。この問題は慎重に検討いたしまして、近日中にまたお話ししましょう。お電話、感謝いたします」>とヒラリーは電話を切った。
その後がふるっている。
<「まさか中国人も今晩の就任記念舞踏会の前に火蓋を切ったりしないでしょう」と大統領は言った。「せっかく新政権ができたばかりなんですからね。それに中国とは何も問題はないでしょう。向こうだって理性的に振る舞うと思うわ。この問題については、もう一言も聞きたくない」>
さらに<「私は中国のことならよーく分かっているわ。前の大統領は分かってなかったの。つかず離れずの関係が大切なのよ。ほら、私、選挙運動中はあのジョン・マケインと始終ダンスしたでしょう。同じことは、ジャップとだって中国人とだってできます。まあ、見てらっしゃいな」
大統領は会見を打ち切った。廊下に出て警護係の海軍中尉を呼んだ。「ねえ、私の美容師を呼んできてちょうだい」>
「ショーダウン」の内容をまともに受けるつもりはないが、女性大統領とのやりとりが面白い。翻訳本がでたら、読んでみたいという気になった。
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1687 「ショーダウン」の翻訳本 古沢襄

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