1694 上海の近郊にムスリム聚落 宮崎正弘

北京五輪を控え、テロリストの巣窟となる懼れ、なきにしも非ず。
上海郊外に義烏(イーウー)という町がある。世界的に有名な理由はここが偽物工場のメッカだからだ。
観光客もグッチやディオールの偽物を買い込むためにわざわざやってくる。あれほど著作権侵害を強調してやまないアメリカ人がバスツアーで一番多いのも矛盾した話。インドやアラブからのバイヤーも多い。
異変は二年ほど前から始まった。
アラブ系ムスリムが次々と中国へやってきて義烏に住み着いたのだ。資源重視外交を取る中国がアラブ諸国との交流を深化させようと留学生を大量に受け入れた動きに連動している。
アラブ人ははやくも二千人に達しており数年以内には二万人にふくれあがる勢いだという(英誌『エコノミスト』、08年2月15日号)。
彼らは半年間有効のビジネスビザで中国に入り、やすい繊維製品を買い付けて中東の物流拠点であるドバイに輸出し、半年経つと香港へ出国してビザを更新して義烏に戻ってくる。
中国をでる気配がまったくない。しかも中国国内のムスリムと連帯して新しいイスラム教のコミュニティを形成しつつある。
北京は五輪を控えてイスラム過激派によるテロをもっとも警戒している。
昨秋の中国共産党第十七回大会開催中は、北京市内随所に軍と警察に加え八十四万人もの「私服」がテロ警戒のために配置された。
また2月14日には新彊ウィグル自治区で軍と過激派の銃撃戦が展開され新華社によれば「テロリスト十八名を銃殺した」という事件がおきた。こういう折に上海近辺にムスリムの集落が形成され、イスラム教徒がおおっぴらな宗教儀式を繰り広げるとなると北京中央の心中は穏やかではないだろう。
そうした中国側の神経質をよそに上海空港には陸続としてアラブからの「バイヤー」が到着している。やがて大きな問題に発展する可能性が高い。
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