1758 李明博大統領の訪米 古沢襄

トップ・リーダーが代わると、かくも劇的な変化が生まれるものだろうか。北朝鮮との融和政策を最優先としてきた金大中、盧武鉉政権から李明博(イミョンバク)大統領になったばかりだというのに、摩擦が多かった米韓関係は一変する気配がみえる。
李大統領はニューヨークで北東アジア地域の多国間安保協力の構築に向け、米韓が潤滑油の役割を担うべきだとコリア・ソサエティーの夕食会で演説した。ブッシュ大統領もキャンプデービッドの山荘に李大統領を招いて会談する気の使い方である。
このところ日米関係はかならずしも良好とはいえぬ。少なくとも小泉政権下で演出された小泉・ブッシュ蜜月は後退している。小沢政権が出来たら日米関係は急速に冷却化するだろう。
李大統領がいう米韓が北東アジア地域の多国間安保協力で”潤滑油”になるとは、まだ言い切れないが、日米関係が停滞すれば、その可能性がでてくる。李大統領の訪米から、その意気込みが伝わってくる。
<【ニューヨーク堀山明子】韓国の李明博(イミョンバク)大統領は15日午後、ニューヨークに到着し、就任後初の訪米を開始した。李大統領は同日夜に開かれたコリア・ソサエティーの夕食会で演説し、米韓関係を軍事以外に政治や外交、経済など幅広い分野で利益を共有する「米韓戦略同盟」に拡大させるよう提言。北東アジア地域の多国間安保協力の構築に向け、米韓が潤滑油の役割を担うべきだと強調した。
大統領はこの数年間の米韓関係について「長期的同盟の観点ではなく、政治論理で歪曲(わいきょく)された」と述べ、南北関係を優先して米国との摩擦を生んだ盧武鉉(ノムヒョン)前政権を暗に批判した。
また大統領は「北朝鮮体制を威嚇する意図はない」と金正日(キムジョンイル)体制を保証する立場を示す一方、「北朝鮮は核放棄を促す国際社会の努力を敵対政策と勘違いすべきではない」と述べ、外部からの脅威を理由に核開発を進める北朝鮮を批判した。
李大統領は18日から1泊2日の日程でワシントン郊外の大統領山荘キャンプデービッドに韓国大統領として初めて招かれ、ブッシュ米大統領と会談する。(毎日新聞)>
李大統領の意気込みとは別の次元の話になるが、韓国の政情は複雑である。「キャンプ・デービッドでの一泊の宿泊料があまりにも高い」という批判は、あまりにも北朝鮮寄りだが、米韓同盟関係が十年前の次元にまで戻るには時間がかかる。
朝鮮日報の記事はかなり慎重な見方をしている。
<李明博(イ・ミョンバク)大統領が15日に米国へ向け出発し、「実用外交」路線で国際的な外交の舞台にデビューした。15日から21日までの日程で行われる今回の訪米と訪日は、李大統領就任後初の海外日程という点以外にも、金大中(キム・デジュン)、盧武鉉(ノ・ムヒョン)両政権の10年でぎくしゃくした伝統的同盟関係の修復に向けた最初の一歩という意味がある。
李大統領は最近行われた外信とのインタビューで、「過去10年間、韓米関係が非常に深刻なレベルにまで悪化したというわけではないが、われわれの側の数多くの困難な事情で、(同盟関係に)一部問題が生じていた。今回の訪米では韓米関係の修復を最優先とし、両国の間で信頼関係を築けるようにしたい」と述べた。
現時点での雰囲気は良好なようだ。李大統領が韓国の大統領として初めて、米国大統領の別荘であるキャンプ・デービッドに招待されて首脳会談を行うのは、「信頼回復」という側面から見れば非常に象徴的な出来事だ。李大統領はこれを基に、激変する安保情勢や国際情勢に見合った韓米同盟を新たに築き上げるという課題を実行に移すものとみられる。
しかし、李大統領の前には困難な課題が数多く待ち受けている。当面は「両国の信頼回復」と「同盟の強化」という課題を、「国益の拡大」というもう一つの目標とどのように並行させ、調整を進めていくかが試されているからだ。すでに米国が同盟強化の代償としてアフガニスタンへの再派兵、防衛費分担金の増額、大量破壊兵器拡散防止構想(PSI)への参加の拡大、牛肉輸入の全面開放などの要求リストを準備して待ち構えている状況にあるからだ。
野党などでは「キャンプ・デービッドでの1泊の宿泊料があまりにも高い」という批判も受けている。韓国政府の関係者は、「李大統領はすでに“国益に反するなら同盟はあり得ない”という実用外交の哲学を提示している。同盟の強化が最優先の課題だが、これを名分として非合理的な譲歩を行うことはない」と述べた。
李大統領はさらに前政権で微妙な緊張と対立を引き起こした、対北朝鮮問題での米国との協力体制においても、確固とした関係を構築しなければならない。高麗大学のキム・ソンハン教授は、「北朝鮮によるいわゆる“通米封南(米国と通じて韓国は封鎖する)”の試みを無力化するためには、李大統領は今回の訪問を契機に、韓米間にスキのない協力体制を内外に向けて確立してこなければならない」と述べた。
キム教授はさらに、「今回は初の韓米首脳会談であるため、李大統領は細かいテーマでの成果に執着するよりも、同盟強化という大きな枠組みを確立することの方が重要だ」とも付け加えた。(朝鮮日報)>
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