「こんなこと、あり?」。香港での異変はホンモノに。人民元が香港ドルより一割強も強くなっているのは、現実か夢幻か。
四年前に香港から広州へ入った折、香港で前泊したので人民元の強さに驚かされた。公式レートは香港ドル100に対して人民元が90だが、町では一対一で流通していた。
十年前まで香港では人民元は流通していなかった。そればかりか、闇の交換レートはめちゃくちゃなほどに香港ドルが有利だった。
香港でダミー会社やペーパー・カンパニィを設立する中国共産党幹部経営の企業は、人民元をたちどころに香港ドルか、或いは米ドルに交換していた。需給関係からみても、香港ドルに人気があった。
昨年、やはり香港からマカオへ渡り、珠海―中山―開平―仏山―広州―恵洲―深センを回って香港へ出た。
どこでも香港ドルより人民元が強かった。交換レートは香港ドル100 vs 95 人民元だったが、実質は 100 vs 103 くらいで、人民元がやや強く、とくに深センでは、香港ドルを受け取るのをいやがった。まったくの様変わりなのである。
ファイナンシャル・タイムズ(4月17日付け)の報道は上記の経過を肌で感じてきた筆者にとっては驚きではない。
同紙はつぎのように伝えている。香港居住者が、どっと国境を越えて深センや広州へ赴き、銀行口座を開設しているというのだ。
人民元が年内にあと15%ほど上昇する観測が流れており、我も我もと人民元預金に殺到しているのである。「?」。
人民元預金は自由都市・国際金融のメッカでもある香港で可能である。げんに香港における人民元預金は前年比40%増加で累積478億元(邦貨換算で7200億円前後)。
これは銀行預金だけの数字である。それなのに何故、境界を越えて、パスポート(香港居住者証)をもって、中国へ行くのか。
理由は金利差である。
香港での人民元預金の金利は0・8%。中国での人民元預金の金利は3・8%。
過去半年間だけで、人民元の対香港ドル交換レートは7・7%アップした。公式レートは香港ドル89-90 vs 人民元 100
一年前と完全に逆転している。
すなわち人民元は、年内さらに上昇せざるをえないという市場の圧力は、香港で現実のものとなっているのである
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1759 香港ドルより強い人民元 宮崎正弘

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