チベットを横目にウィグル(東トルキスタン)では何がおきているか?ホータン暴動は「第二のカディール」(イスラム指導者)の不審死が原因だった。
三月23日に新彊ウィグル自治区のホータンで1000名の「暴動」が伝えられた。実態は静かな女性たち700名のデモを当局が拘束し、これを知った民衆の一部が商店を襲ったらしい。
「ウィグルの母」と呼ばれるカディール女史が日本に来て、各地で講演活動をしたが、マスコミの関心を殆ど引かなかった。
息子二人をいまも新彊ウィグル自治区の監獄に人質としてとられているカディール女史は、昨年度のノーベル平和賞に最有力だった。
この動きを知った北京がウェーデン政府に圧力をかけ、陰湿に反対して受賞をつぶした。
ことし三月三日、ホータンでムタリプ・ハジム氏の突然死が発表されて、人々は衝撃を受けた。
病院に駆けつけた数百人が警官の封鎖を突き破って内部へ入ろうとしたが阻止された。ムタリプ・ハジムは、ホータンの実業家、貿易業者だった。
多くの宗教的行事へのスポンサーとして知られ、町の有名人、尊敬を受けていた。突然、ことしの一月にムラリプの店舗や貿易会社が閉鎖され、当局に逮捕された。獄中で突然「心臓発作のため」、死んだと発表され、民衆の怒りに火がついた。享年三十八歳。
ホータンで爆発的な抗議デモが起こった。チベット問題に呼応した抗議運動と思われたが、ダライラマ法王の動きと関係がなかった。
イスラム教徒は、コーランが入手できないためにイスラム教を正確に理解してはいない。コーランを無神論の中国共産党が禁書扱いしているからだ。
しかし数百年つづく歴史が、かれらの生活の習慣のなかにイスラム教をとけ込ませた。とりわけ服装などの習俗だ。
とくに豚肉を食せず、祈祷の前には手足を綺麗に洗い、男はイスラム帽を、女性はヴェィルを着用する。
モスクは殆どが破壊されたが、各地にすこしばかり「清真寺」(モスクの中国名)として残存している。
モスクの殆どは観光用で、僧侶は共産党のスパイを兼ねているため、誰も信者は寄りつかない。漢族の観光客は聖なるモスクに土足で上がり込むという。
毛沢東の侵略以来、イスラムは脅威であるとして、イマムら(高僧)を人民裁判にかけて多くを死刑にした。夥しいイスラムのイマムが殺され、宗教指導者は不在となった。
チベットと同様にウィグル語は中学から禁止され、北京語が強要され、大学入試も公務員試験も北京語であるため、若いウィグル人は中国語を喋る。言語における漢化政策は進んでいる。
これは民族文化の虐殺であり、さらには経済的差別が著しい。
▲ウィグルの資源を漢族が盗掘している
ウィグルの資源は膨大なガス、石油。これを中国人がきて、盗掘してゆく。
内陸部からやってくるエンジニアも建設業も漢族であり、銀行も漢族であり、開発と繁栄を目指してコルラ、トルファン、イリ、カシュガル、ホータンに押し寄せた漢族はホテル、レストラン、カラオケ、土産屋を開き、中国からつれてきた漢族を雇った。
地元ウィグル人に就労の機会はすくなく、たとえあっても建設現場労働、奴隷のようにこき使われた。
「民族浄化」を目指して、若いウィグルの女性を大量に沿岸部へ移動させて、しかも漢族の男性と見合わせた。集団就職で沿岸部へ移住したウィグルの民は、そこでも徹底して差別された。
いまも差別され、しかも一年働いても無給が多く、人権問題となっている。人民日報も新華社も「中国に民族差別は存在しない」と嘯いている。
だれもが抗議に立ち上がるだろう。しかし、刃向かう者を中国は「テロリスト」と定義した。
ウィグルの抵抗勢力には「ヒズバ・ドタリル・アル・イスラム運動」と「東トルキスタン・イスラム運動」の二大潮流がある。この二つの組織は永続的な独立達成を穏健に訴え、暴力手段を否定している。
平和的手段を呼びかけておりテロルとはほど遠い(もっとも地下に潜った過激派はアフガニスタンのタリバン陣地で軍事訓練を受け、武器をもって中国へ潜入したといわれる)。
最近、警戒を強める当局が「北京五輪終了まで、ウィグル人にはパスポートの発行を延期する措置をとったため、数千規模の抗議行動がおきた。ホータンで千人を越えたデモは初めてである」と直後にホータンを取材したTIMEの記者が語っている(タイム、2008年4月28日号)。
ウィグル人民の中国共産党への怒りが爆発する。
漢族への恨みは歴史的な体質として染みこみ、オリンピックを奇禍として世界へ訴える絶好のチャンスとばかり彼らはチベット問題に呼応して世界的規模で動きだした。
慌てた当局は、「テロリストらは五輪をめざす外国人選手の誘拐を画策した。このためウルムチで45名を予防検束した」などと眉唾の発表をおこなった。
四川省や温洲からやってきた商人らはホータンでも店舗を開業しているが、暴動以来、シャッターを下ろしたまま、ひっそりとしていると前掲タイム誌が報道している。
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